経済産業省の「ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)」に対し、パブリックコメントを提出

FBAAは経済産業省の「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」のガイダンス案にパブリックコメントを提出しました。
ファミリービジネスは、日本経済の基盤を支える重要な存在です。雇用を守り、地域に根差し、長期志向で経営を行う企業群の多くは、実はファミリーに支えられています。
経済産業省が公表した「ファミリーガバナンス・ガイダンス(案)」は、こうした企業の持続的成長に向けた重要な一歩であり、ガバナンスの体系化という点で大きな意義を持っています。しかし同時に、看過できない論点も含まれています。それは、本ガイダンスが全体として「ビジネスのためのファミリー」を前提としているようにも読める点です。
ファミリーガバナンスが、事業の持続や企業価値向上のための手段としてのみ語られるとき、ファミリーそのものの価値や魅力は後景に退きます。その結果、次世代のファミリーメンバーが「なぜこの事業に関わるのか」という内発的動機を見失うリスクがあります。これは長期的には、事業承継の断絶というかたちで顕在化しかねません。
本来、ファミリービジネスの本質は、ビジネスとファミリーがどちらかに従属する関係ではなく、互いに影響し合いながら共存する点にあります。その接点を設計・運用するのがガバナンスである以上、「ファミリーのためのガバナンス」という視点を欠いてはなりません。
さらに重要なのは、ガバナンスは制度だけでは機能しないという現実です。ファミリー憲章や意思決定ルールを整備しても、それが実際に機能するかどうかは、対話の質や信頼関係、そして関係者の納得感に大きく依存します。形式的に正しい意思決定であっても、納得が伴わなければ、その後に禍根を残します。
現場では、創業者や先代の影響力といった「非公式なガバナンス」も無視できません。これらを排除するのではなく、いかに可視化し、バランスを取るかが実務の要諦です。
また、ガバナンスは一度作れば終わりではありません。世代交代や環境変化に応じて見直し続ける「動的な仕組み」として捉える必要があります。過度な形式化は、かえって意思決定のスピードや柔軟性を損なう副作用も生みます。
ファミリービジネスの強みは、制度では測りきれない「関係性資本」にある。ファミリー内の信頼、従業員との長期的関係、地域社会とのつながり――これらこそが、危機時の意思決定や持続的成長を支える源泉です。
ガバナンスを制度として整えることは重要です。しかしそれ以上に重要なのは、それを「回し続ける力」、すなわち人と関係性に根差した運用です。
FBAAはこのような考えを大切にして、永く繁栄するファミリービジネスを支援して参ります。
【経済産業省】
第4回 ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会:
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/family_business/004.html
【FBAA】
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000175612.html
HP: https://fbaa.jp/archives/news/20260428-01
Author Profile
慶応義塾大学経済学部卒。
コロンビア大学ビジネススクール経営学修士(MBA)。経済産業省「地域経済におけるファミリービジネスに関する研究会」委員(平成21年度)。
キャラクター商品メーカーを経て家業の寝具製造卸会社に勤務。基幹業務システム設計導入、リストラプラン策定実施、新規事業立ち上げの後、4代目社長。その後IT関連の起業に参加。'03年WellSpring設立。'24年2月にセブン・スプリングス株式会社設立、代表取締役・ファミリービジネスコンサルタントとしてコンサルティング・講演・研修・執筆活動を行っている。
著書:「同族経営はなぜ3代で潰れるのか?~ファミリービジネス経営論~」クロスメディア・パブリッシング、「ほんとうの事業承継」共著 生産性出版 他