FBAAが考える、ファミリーガバナンスの第一歩

 

経済産業省では現在、「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」が進行しており、ファミリーガバナンス・ガイダンス(仮称)の取りまとめに向けた議論が進んでいます。これまでに3回の会合が開催され、骨子案も公表されました。 (経済産業省  https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/family_business/index.html?utm_source=chatgpt.com) 本研究会には、FBAA理事でもある階戸照雄氏がオブザーバーとして参加しています。

今後、ガイダンスが確定し社会に浸透していけば、金融機関やコンサルティング会社等によるファミリー憲章(家憲)策定支援サービスは一段と活発になるでしょう。一方で、ここには大切な注意点があります。“コーポレート”ガバナンスは、取締役会や経営会議など既存の社内会議体で議論し、制度として整備しやすい領域です。しかし「ファミリー」は同じ方法では動きません。

大正期や戦前の家父長制のもとでは、家長の鶴の一声で家憲が実効性を持ったかもしれません。けれども現代の日本では、60歳以上の世代が「家長が決めれば家族は従う」と考える場面があっても、子世代は戦後の個人主義的教育の中で育っています。合意形成を飛ばして“いきなりルール化”を進めれば、独断と受け止められ、結果としてファミリー憲章は「絵に描いた餅」、「ただのお飾り」になりかねません。家長の一声でファミリーが一枚岩になる時代は、すでに終わっています。

だからこそ必要なのは、憲章の文面づくり以前に、話し合いの場づくりです。時間とエネルギーをかけ、ファミリー全体がコミットし、納得感を積み上げるプロセスが欠かせません。言い換えれば、ファミリー憲章に取り組む前に「学習するファミリー」へと移行することが重要です。多くの専門家にとってファミリー領域への介入は今も“難所”ですが、今回のガイダンスがその現実を踏まえ、対話と合意形成の重要性を十分に織り込むことを期待したいところです。

経産省の研究会の議論では「ファミリーガバナンス」を「ファミリー等がファミリービジネスに関する意思決定を行う仕組み」と捉えています。もし家長が一人で意思決定をし続けるのであれば、極端に言えばファミリーガバナンスは不要とも言えます。しかし複数の家族が関与する以上、意思決定の仕組みづくりは避けて通れません。FBAAは、その出発点である家族の対話の場を整え、学習するファミリーを育てる支援を大切にしています。

Top