三円モデルで読み解くファミリービジネスの基本構造

FBAAは、三円モデル(スリーサークルモデル)をファミリービジネス支援の基本的なフレームワークとして使っています。これは、ファミリービジネスを理解するための基本的な枠組みで、「ファミリー」「オーナーシップ(株主)」「ビジネス(事業)」の3つの円が重なり合う構造、つまり3つの関連する要素からなるひとつのシステムとして捉えます。このモデルの重要な点は、同じ人が複数の円に同時に属することで、立場や利害が複雑に交錯するところにあります。

例えば、創業者は「家族の一員」であり「株主」であり「経営者」でもあります。一方で、配偶者は「家族」には属するが「経営」には関与しない場合もあり、外部から招聘された社長は「経営」には属するが「家族」ではありません。このように、人ごとに立場が異なるため、意思決定やコミュニケーションにおいてズレや摩擦が生じやすくなります。
経営者や支援者にとって大切なのは、「問題は人ではなく構造から生まれる」という理解です。たとえば、家族としての感情と、経営者としての合理性が衝突するのは自然なことであり、誰かの性格の問題ではありません。三円モデルは、この構造的な違いを可視化し、どの立場で話しているのかを整理する手助けをします。
さらに実務的には、この3つの領域ごとに適切な意思決定の場を設けることが重要です。家族の関係性を扱う場(ファミリー会議)、所有の意思を確認する場(株主・オーナー会)、経営を議論する場(取締役会)を区別することで、混乱を減らし、建設的な対話が可能になります。
三円モデルは単なる図ではなく、「関係性を整理し、対話の質を高めるための思考ツール」です。この視点を持つことで、ファミリービジネス特有の複雑さを理解し、より持続的な経営と家族の調和に近づくことができます。
FBAAの資格認定基礎プログラムでは、この三円モデルを中心に、講師や参加者との対話を通してファミリービジネスを理解し、支援や経営に関する洞察を深め、実務への応用を考えます。
Author Profile
慶応義塾大学経済学部卒。
コロンビア大学ビジネススクール経営学修士(MBA)。経済産業省「地域経済におけるファミリービジネスに関する研究会」委員(平成21年度)。
キャラクター商品メーカーを経て家業の寝具製造卸会社に勤務。基幹業務システム設計導入、リストラプラン策定実施、新規事業立ち上げの後、4代目社長。その後IT関連の起業に参加。'03年WellSpring設立。'24年2月にセブン・スプリングス株式会社設立、代表取締役・ファミリービジネスコンサルタントとしてコンサルティング・講演・研修・執筆活動を行っている。
著書:「同族経営はなぜ3代で潰れるのか?~ファミリービジネス経営論~」クロスメディア・パブリッシング、「ほんとうの事業承継」共著 生産性出版 他