「心の承継とメンタライズ」
今回は、「メンタタライズ(mentalize)」という言葉を
ご紹介します。
家族における「心の承継」に大変有益だからです。
メンタライズは、精神分析医ピーター・フォ、ナギー氏
によると「心で、心を抱えること(holding mind in mind)」
です。
たとえていうと、お母さんが自分の心で、赤ちゃんや子ども
の心を抱えることです。
「心で、心を想うこと」とも訳されます。
お母さんの心に長期間にわたって、心を抱えてもらうと、
「心を抱えてもらった側の体験」と
「心を抱えるお母さんの側の心」の”両方”が、
子どもの心に宿り、育成されます。
すると子どもに、『心』ができてきます。
(注:「心」の鍵は「心を”抱える側”」の内面化です)
それが、ファミリーでもたらされる最良の心の贈りもの
の1つであり、承継されるべきものです。
最新の心理学の知見では、赤ちゃんに心はありません。
心が育つ「潜在可能性」はあります。
その可能性が開花するには、心を誰か~たとえば母親~
から『具体的・実際に』贈与される必要があります。
( 注:「具体的・実際に贈与する」とは、
どういうことでしょうか?
ご関心があれば、ご一報ください)
贈与がなければ、子どもの心は「不在」になります。
潜在可能性はあるのですが、開花しないまま宙に浮いた状態
となります。
子どもは、何かが「足りない」のを感知、直感します。
しかし、何が不足しているのか把握できません。
歯痒いなかで、もがき苦しみます。
育児放棄する虐待的な親ならまだしも、子どもの身の回り
の世話をちゃんとしてきた親には、何が起きているのか
わかりません。
なぜ子どもが苦悩しているのか、理解できません。
子ども自身も、自分のもがきの理由が、意味不明です。
子どもの身体的ケアをする親が、子どもの心的ケアを
できるとは限りません。
物理的世話をちゃんする親が、心理的にもいい世話
をする親かというと、そうでないケースが山ほどあります。
心理的にいい親とは、メンタライズできる親です。
心のある親です。
自分の心で「未だ潜在可能段階に留まっている子どもの心」
を抱えることのできる親です。
サンテグジュペリ著『星の王子さま』に、
「大切なものは肉眼には見えない。”心”で見ないと見えない」
という有名な言葉があります。
その心は、親から贈られなければ承継できません。
心がなければ、大切なものは見えません。
お金やビジネスの面では「富裕層」でも、心の面では
「貧困層」です。
心を贈ることのできない親は、自分の親世代から
心を承継していません。
親自身も心を贈られていません。
心を承継していない親が、次世代に心を贈与することは
不可能です。
でも大丈夫です。
心を贈る側は親でなくてもいいからです。
訓練を積んだセラピストは、”親に代わって”
その役割を行います。
セラピーの場面で、心の不在のクライエントに向かって
繰り返し、粘り強く・根気よくメンタライズを提供します。
クライエントのファミリービジネス”全体”が、成功裡に
永続するのを支援するためです。
“全体”支援には、「ファミリーの心」の側面のケアが
欠かせません。
今回は、メンタライズの「詳細」は述べませんでした。
あなたが対人援助のプロで、メンタライズについて
より詳しく深く理解したければ、ご一報ください。
あなたがファミリービジネスの当事者で、「心の承継」
について関心があれば、ご遠慮なくご連絡ください。
応援させていただきます。
本コラムは2名で書いております。
・FBAAフェロー 富士見ユキオ
・FBAAフェロー 岸原千雅子
岸原千雅子 -Profile-
臨床心理士/公認心理師
「オーナー・コーチング:登録商標:」コーチ
ファミリービジネス・アドバイザー認定資格保持者
交渉アナリスト1級 日本交渉協会認定
相続アドバイザー協議会認定会員
英国IFA認定アロマセラピスト
お茶の水女子大学卒業(文教育学部)
認定プロセスワーク2ndトレーニング教師
日本ホリスティック医学協会 顧問
日本トランスパーソナル学会 理事
株式会社インテグリティ 代表取締役
一般社団法人ファミリービジネス支援センター 代表理事
「アルケミア」こころとからだの相談室 代表(2002年開業)
各種家族療法の知見を取り入れ、カップル・セラピー、フ
ァミリー・セラピーの実践に長年取り組んでいます。
また、
・心療内科(赤坂溜池クリニック)での15年にわたるカウンセリング
・小・中学校、看護学校でのスクールカウンセリング
・がん患者と家族のためのカウンセリング(vol-next)
・医学・心理学関連の、編集・ライティングの経験
などを活かし、医療機関や学校との連携、家族や子どもの支援、
患者と家族の支援なども広く行っています。
《ファミリービジネスの心理支援について》
ファミリービジネス(家族経営企業)のご家族に特有の、以下のような心理支援を行っています。
・家族の円滑なコミュニケーションを図りたい
・ファミリー間の心理的な葛藤や紛争状況を解決したい
・事業承継にまつわる行き違いやトラブルの対処
・オーナーの心の悩み
・後継者世代の心の悩み
・先代と次世代、現社長と後継者の間の、関係改善
・家族メンバーそれぞれの自己実現の応援
・家族会議やファミリーミーティング開催の支援
《その他の支援について》
・相続にまつわる家族関係の修復・改善、および心理的な支援
・離婚や結婚にまつわる心理的な支援
・子育てや子どもに関する悩みの支援
Author Profile
ファミリー・ビジネスを持続・永続的に行うには、経営コンサルティングや税務アドバイスのような「ハード・スキル」と、ファミリー・セラピー(家族療法)のような「ソフト・スキル」の3面からの統合的支援が求められます。私は、家族の「癒し」と「再建」のためのファミリー・セラピーと、家族の健全さの「維持」と「予防」と「発展」のためのファミリー・アドバイスを34年にわたり行ってきました。
また、ファミリー・ビジネスのオーナーや大企業のエグゼクティブに対するコーチングにも、たくさん携わらせていただいています。
現在は事業承継・相続や経営について学び、各専門家と協力・協働しながら、日々ファミリー・ビジネス・アドバイスを行っています。
ファミリーとビジネスの結びつきを背景から支援するファミリー・セラピーに、より一層励んでいきたいと考えています。
現在、ファミリービジネス支援センター(FBSC)共同代表、セブン・スプリングス株式会社メンバー、一般社団法人FBAA・ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(フェロー)。
著書『痛みと体の心理学』(新潮社)他、訳書アーノルド・ミンデル著『オープン・フォーラム』(春秋社)他多数。