FFI 2013年コンファレンスレポート
2013年10月16日から19日、FFIの2013年総会に西川理事長とともに参加して参りました。
毎回、世界のファミリービジネスコンサルタントたちとの交流を楽しみに参加してきましたが、数えてみると私は今年で8回目の参加です。
FFIメンバーの中で、経歴だけは中堅どころになってきた私ですが、果たしてそれだけの実力を養っているのかと我が身を振り返り、気持ちを新たにした総会でありました。
今年の総会はサンディエゴ。
明るい太陽とさらりとした空気のもと、心地よい環境での4日間でした。
毎年この会合で会うFBAAのアドバイザー、Kelin Girsick氏から、今年も貴重なアドバイスをいただき、またFFIプレジデントのJudy Green氏にはFBAAの立ち上げ成功を伝えてまいりました。
今年は世界から約400名のメンバーが集まり、4つのワークショップ、4つの基調講演、35コマのプレゼンテーション、2つのパーティー、会員総会と認定証の授与式が行われました。
プレゼンテーションは多様なテーマで行われます。
・プライベートエクイティー経由の投資から直接投資へシフトしている最近のファミリービジネスによる投資の傾向について
・フィランソロピー活動の成功法
・クライアントの依存症に対するアドバイザーとしての支援法
・非ファミリー経営幹部の活性化
・ファミリービジネスとフランチャイズビジネス
・ファミリーオフィス設立、運営の要点
・中国、香港、台湾のファミリービジネス
・家長が急逝した時の対応
・大学ファミリービジネスセンターの課題
・ファミリー銀行
・複数ファミリーによるファミリービジネス経営
・コンサルタントはどのように支援を完了してクライアントを手放すべきか?
・コンサルタントの安全圏とその拡張への挑戦
など、全部に参加したいところですが、5つの部屋に分かれて同時並行で行われるため、どれを選ぶかが悩みどころです。
一風変わったところでは、別荘所有がもたらすファミリーの夢と悪夢、と題して、別荘をファミリーの紛争の種にせず、発展のチャンスにするための方策を論じるものがありました。
参加したプレゼンテーションから、今回印象的だった2つのテーマについてご報告します。
ガバナンス構築の重要性
ファミリービジネスコンサルタントの草分けと言われるLeon Danco氏が、今年の2月に亡くなりました。
氏の信念は、「健全なファミリーは健全なビジネスを作る」というもの。
そしてファミリービジネスにとって、社外取締役は不可欠のものである、というのが彼の50年のコンサルタント人生を通しての主張でした。
Danco氏への追悼もあってか、今年はガバナンスに関するプレゼンテーションが多くみられました。
社外取締役が機能しているFBは、老社長が居座ることが少なく、事業承継の準備が円滑に進むという研究発表や、ガバナンス構造の改編が承継のプロセスに良い影響を与えたという事例報告などガバナンスと事業承継の関係に焦点を当てたものが目を引きました。
その中で、ドル紙幣の用紙を一手に担う220年の業歴のCrane社の元会長、Lansing Crane氏のプレゼンテーションでは、80年代に、従来の5つの紙事業分野(カーボンペーパー、青写真用紙など)の市場が縮小し、危機的な状況に陥った時、取締役会を改編し、役員の半数を社外取締役として、紙メーカーから通貨メーカーへと戦略を大転換した経緯が語られ、ファミリービジネスにおける社外取締役の重要性が強調されました。
アドバイザリーボード(諮問委員会)よりも社外取締役を薦める理由としてCrane氏は、「権威がなければアカウンタビリティーもない」、と明言したのが印象的です。
各国政府のファミリービジネスに対する理解と支援
もう一つ、興味深い発表がありました。
オランダのある地方政府が、ファミリービジネスのガバナンスと戦略化に関する実験調査のプロジェクトを行った報告です。
地方政府の支援のもと、従業員数26人から100人の中小ファミリービジネス18社が参加し、コンサルタントの指導の下、取締役会を改編し、社外取締役やアドバイザリーボードを導入、その結果の戦略転換や業績の変化を大学の研究者が調査、報告するというものです。
確実な戦略転換のために、オーナー経営者のオープンさとファミリーの合意が不可欠であるという調査結果は納得のいくものでありました。
それにもまして感心したのは、地方政府がファミリービジネスを重要な政策課題と認識していること。
その後のディスカッションでは欧州各国を始め、シンガポールなど多くの国でファミリービジネスを重視し、育成する政策があるとの話でした。
わが国でもファミリービジネスの育成、支援が政策に反映されるよう、FBAAの果たすべき役割は大きいことを実感してまいりました。