慈善活動を持続的に成功させるためには、ファミリービジネスの次世代に適切に働きかけることが最も重要である。

家族がどのようにして世の中に貢献しているかを教えることは、次世代が20代、30代、40代になるまで待つ必要はありません。子供たちや10代の若者たちを年齢に応じた方法で参加させることで、スチュワードシップを生活の一部として自然に取り入れ、重要なスキルを教え、世代間の絆を育むことができます。

これらの方法は、一族の慈善活動のレガシーを将来に繋いでいくのに役立ちます。

若い世代への教育

フィル・アン・スロ・ピィ “を正しく発音できるようになる前から、次世代を担う子どもたちは、家族の慈善活動に参加することができるのです。それは教育から始まります。

例えば、あるファミリー企業の顧客が、地元の動物園に寄付をしているとしましょう。アドバイザーは、家族会議の際に、若い世代と一緒に時間を過ごし、大好きな動物の餌や世話にどれだけの費用がかかるかを話し、家族の寄付がその必要性を満たすのに役立っていることを説明するよう勧めるかもしれません。

ほかに家族会議でできることとしては、次世代を担う子供たちに地域社会で見つけた課題を尋ねることもあげられるでしょう。そして、さまざまな課題の解決方法についてブレインストーミングをさせ、家族がどのように解決に貢献できるかについて話し合いを進めることです。

若い次世代ファミリーには、他人のニーズに気づき、それをどのように満たすかを評価するよう促すことで、強いフィランソロピー・マインドを植え付けることができます。

“まだ、「フィル・アン・スロ・ピィ」を正しく発音できるようになる前から、次世代を担う子供たちは、家族の慈善活動に参加することができるのです。”

個人の情熱の尊重

アドバイザーは、子供や青年、若い世代の興味が薄れないように、彼ら自身の慈善活動への情熱を自由に追求できるような環境を整えるよう勧めてください。家族で行う慈善活動の取り組みは、前の世代の方法を踏襲するだけでなく、次世代が楽しんで参加し、変化をもたらすことができると感じれば、成功する可能性が高くなります。

地元の小児病院を支援している場合、その病院が対象とするさまざまな患者について学び、彼らに共感し、どのように支援したらよいか自分たちで考えることができれば、10代の子供たちの参加意欲が高まるかもしれません。息子さんが芸術家なら、絵画のワークショップを開いてみるのもよいでしょう。娘が医学に興味があるのなら、その興味をどのように生かすか、また家族で協力して病院の使命を果たすにはどうしたらいいか、家族で話し合うこともできます。

柔軟な体制の確立

次世代に慈善活動への参加を促すには、柔軟な体制が効果的です。家族で資金を配分し、家族が直接寄付できるようにすることで、誰もが個人的に意味のある貢献の仕方を見つけることができるようになります。

例えば、アドバイザーは、家族全員で１年間の寄付金総額の大部分をどのように配分するかを決める一方で、許可や承認を求めなくても一定の割合で家族個人が指示できるようにすることを勧めるかもしれません。

家族間の積極的なコミュニケーションを促進する

たとえ家族が寄付の一部を自由に決めることができたとしても、その選択に責任を持ち、互いの関心事を知ることが大切です。例えば、長女に寄付の行き先を決めさせた場合、長女は家族に対して、なぜその活動を支援することにしたのか、家族はどのように時間、能力、資金を提供できるのか、その寄付によって期待できる効果について発表することを奨励します。

このような実践は、異なる世代が互いにコミュニケーションを取り、学び合うことにつながります。高齢者は、新しい寄付の機会や、子供や孫の情熱について知ることで、活力を得ることができます。

若い世代は、自分たちの価値観と年長者の価値観がどのように交わっているかを発見したり、思い出したりすることができます。同時に、寄付を通じて自分自身を表現する自由を享受し、家族というリスクの低い中で意思決定やプレゼンテーションのスキルを身につけることができる。このように、慈善活動は、お金の価値、ガバナンス、リーダーシップについて学ぶ訓練の場となるのです。

社会貢献活動の進化に対応した設計の柔軟性

将来の世代が慈善活動を通じてどのような社会的課題に取り組みたいと考えるかを予測することは難しいことです。家族の価値観は、個々の家族の経験や優先順位、また、家族が生活する環境の影響を受けることがあります。

しかし、家族の価値観は、世代を超えて一貫していることが多いのです。最も成功する慈善事業は、先人たちに敬意を払いながら、進化していく必要があることを予見しなくてはならないのです。

例えば、ある家族は、複数の種類の慈善活動を支援するための方法を準備し、各世代がそのうちの最大 2つのカテゴリーを変更できるようにします。そうすることで、若い世代は、前の世代が行っていた寄付活動の目標とのつながりを保ちつつ、自分たちが関心のなくなった活動や、かつて家族にとって緊急性を欠いた活動に縛られることがなくなります。

アドバイザーは、慈善活動の目的を定期的に見直し、その目的がまだ家族のために役立っているのか、それとも見直す必要があるのかを確認するための時間を設けるようにアドバイスすることができます。世代を超えた家族の意思決定は、敵対的ではなく、協力的な環境を醸成することが重要です。

家族で行う慈善活動の取り組みは、前の世代の方法を踏襲するだけでなく、次世代が楽しんで参加し、変化をもたらすことができると感じれば、成功する可能性が高くなります。

ファミリーアドバイザーの役割

会社を経営する家族は、次世代にどのように慈善活動への参加を促し、教育していけばよいのか分からないと感じるかもしれません。信頼できるファミリーアドバイザーは、次世代が一族の寄付の遺産に貢献できる方法にスポットライトを当てるなど、一族と協力してどこに寄付するかを見つけ、実行することで重要な役割を果たすことができるのです。
ファミリーアドバイザーは、ファミリーの強みを特定し、それを基にファミリーが努力を結集し、次世代への入り口を作る手助けをすることができます。また、適切なガバナンスの仕組みやポリシーを設計したり、特に複数の世代の声が交錯するような複雑な家族の力学に対応できるよう、家族とともに支援することもできます。

最後に

平均寿命が延び、3世代、4世代が同時に慈善活動に参加することが一般的になりつつあります。若い世代を参加させないことは、貴重な家族の資産を無視することになり、また、シニアファミリーが慈善活動のリーダーシップを譲り、若いファミリーがその役割を果たすことができない場合、スムーズな移行ができなくなる可能性があるのです。

アドバイザーは、次世代を担う若い世代が、個人的に意義のある方法で家族の慈善活動に参加できるよう支援することができます。彼らが、家族の慈善活動の意思決定に積極的に参加できる年齢になる頃には、家族の遺産を引き継ぎながら、自分自身の足跡を残すことができるようになっているのです。