ファミリービジネスにおける「システム論」の視点と「それを超えるもの」
私たちは、認定プロセスワーカー及び臨床心理士として、25年間強にわたり、数万のセッション数を行ってきています。
個人心理療法、夫婦療法、家族療法(ファミリー・セラピー)などを、夢分析などを通じた深層心理学やトランスパーソナル心理学、身体心理学~特に、「ドリームボディ・ワーク」~の立場から実践してきました。
その中で実感したことを書かせていただきます。
家族療法で重要な視点は、「システム論/全体論」
それは、「個」と「個」の総和が、「家族」という「システム/全体」になら「ない」、ことを教えます。
「システム」は、「個」の合計を超え出た「何か」であり、「個」の足し算では、計り知れない「不可思議な何か」です。
「個」と「システム」の相反
「個」の視点と、「家族」ないしは「システム」の立場は、「相反/VS」となってしまうことがよくありますす。
例えば、東洋医学は、症状や病気を、患者の身体の「全体」、生活「全般」の不調から捉えますが、
「システム論」をベースにした家族療法も、家族の個人メンバーの心身の病気を、その人「個人」のもの、としてで「なく」、その人の属する「ファミリー全体」の問題/不調によるもの、と仮定します。
東洋医学が、症状を呈したある臓器のみを、「個別」に見るのを良しとしないように、家族療法も、心身の病を発病した「個人」だけを診ることをしません。
要素還元論
システム論/全体論の立場からすると、「個人療法」~たとえば個人心理療法、個人コーチング、個人コンサルティング~が上手くいかなかった場合だけでなく、何と、上手くいった場合にも、それが「家族というシステム」に、マイナスの影響を及ぼすことが、ままあります。
それは、「個」の視点が、「システム」という「上位」概念を、「個」という「下位」次元へと還元し/引きずり落とし、「システム」を『個々別々のもの/バラバラ』にしかねないからです。
~これを「要素還元論」と言います~。
「個」と「システム」には、『次元』の違いがあるのですが、このあたりのことは、プロの個人療法家や臨床心理士たちにも、あまり理解されていません。
「個」の視点を尊重できるかが課題
課題は、「システム論」に基づいた「家族療法」を行いながら、同時に、いかに、「個」の視点を尊重していくかです。
そこが、「システム」と「個」の両方を大切にする、ホリスティックな療法を実践する上で、私たちが日々格闘し、工夫している点です。
システム論の問題
システム論自体にも問題があります。
その1つは、システム論が、実は、近代科学と同じ、(対象や被験者の)「外」の観察者の視点をベースとしている点です。「外」の立ち位置を仮定しているため、それは、近代科学と同様、「客観性」を持てると考えるのですが、その療法を受けたクライアント(お客様)の側からすると、「冷たい」感じがします。
理由は、自分たち(クライアント・ファミリー)が、科学者の「観察対象/実験材料/被験者」になった/させられた気がするからです。
「量子力学」的ファミリー・セラピー
それに対して、「客観性」を心がけながらも、『クライアント(お客様)目線』からすると、セラピストは決して客観的にも、中立的にも映らない可能性があることを想定/前提とし、それを認めた上で実践するタイプのファミリー・セラピーがあります。
それは、セラピストが、「科学者」的観察者であるにもかかわらずクライアント・ファミリー(つまり、被験者)と同じシステム「内」~実験室「内」~に居ることを許容する寛容な「量子力学」的ファミリー・セラピーです。
注)このあたりは難しいですが、プレミアムな家族療法を進める上での最重要点ですので、お話にもう少し、おつき合いください。
このタイプのファミリー・セラピーは、お客様に、「冷たさ」を感じさせません。
それは、オリジナルで、手づくりの温かさのあるファミリー・セラピーを可能にします。
が、それには、長年にわたる職人的+アーティスト的トレーニングが欠かせません。
「システム論」に基づく家族療法は、「行動科学」
それに対して、セラピストがクライアント・ファミリーと同じシステム「内」に入っていることを前提に進めるファミリー・セラピーは、「量子科学」的です。
ここでは、「行動」よりも、「心のあり方」/「心の構え」」/「心の科学」がテーマとなります。
私たちの家族療法では、旧来の「システム論」と新しい「量子論」の両立場を尊重し、駆使しています。
ファミリービジネス・アドバイスにおける「システム論」
ファミリービジネス・アドバイスにおいては、(A)「ビジネス」、(B)「オーナーシップ」、
(C)「ファミリー」の3者、全体を総合的に、「システム論」的にサポートしなければなりません。
ここでも、「システム論」が不可欠です。
もし、(A),(B),(C)のいずれかのみ、または2つのみを応援すると、それが失敗した場合のみならず、何と上手くいった場合にも、『ファミリービジネスという全体』に対して、負の影響を及ぼしかねません。
下手をすると、ファミリー・ビジネスの『全体性』を「バラバラに」しかねません。
ここでの課題は、(A),(B),(C)を総合的/システム論的に見ながら、かつ(A),(B)、(C)を、それぞれ個々に、いかに尊重するかです。
システム論的立場から「ビジネス」と「オーナーシップ」と「ファミリー」の3部分を、どう「関係/結び」つけていくか、どう統合していくかが、最重要テーマです。
それを可能にするべく応援させていただくのが、プロフェッショナルなファミリービジネス・アドバイザーです。
そこからさらに腕を磨いて、量子力学的視座を取り入れた一段上の職人かつアーティスト的プレミアムなアドバイザーになるべく、私たちは日々の、ファミリビジネス・アドバイス臨床実践と研鑚に努めています。
Author Profile
ファミリー・ビジネスを持続・永続的に行うには、経営コンサルティングや税務アドバイスのような「ハード・スキル」と、ファミリー・セラピー(家族療法)のような「ソフト・スキル」の3面からの統合的支援が求められます。私は、家族の「癒し」と「再建」のためのファミリー・セラピーと、家族の健全さの「維持」と「予防」と「発展」のためのファミリー・アドバイスを34年にわたり行ってきました。
また、ファミリー・ビジネスのオーナーや大企業のエグゼクティブに対するコーチングにも、たくさん携わらせていただいています。
現在は事業承継・相続や経営について学び、各専門家と協力・協働しながら、日々ファミリー・ビジネス・アドバイスを行っています。
ファミリーとビジネスの結びつきを背景から支援するファミリー・セラピーに、より一層励んでいきたいと考えています。
現在、ファミリービジネス支援センター(FBSC)共同代表、セブン・スプリングス株式会社メンバー、一般社団法人FBAA・ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(フェロー)。
著書『痛みと体の心理学』(新潮社)他、訳書アーノルド・ミンデル著『オープン・フォーラム』(春秋社)他多数。