ファミリービジネス永続化に必要な人材の確保(後継者問題)

ファミリービジネスにおいて、人材の問題として最も意識され、また大事なものは企業経営を引き継ぐ後継者の問題であることは言うまでもありません。

長年培ってきた資産、会社、ブランド、従業員を守り、さらに次の時代に向けて拡大・成長させていくために、企業経営を誰が引き継いでいくのか、事業承継の中で最大の課題が、後継者を誰にするのか、という点にあります。

企業経営者は、自分の子供たち、あるいはファミリーの中に会社経営という重いバトンを渡すのにふさわしい人物は誰か、またファミリーの中にいない場合には、これをファミリー以外の会社の人材の中から見つけられるか、さらにそれでもいない場合には、第三者への株式譲渡を考えるか、あるいはどうしても見つからない場合には廃業か・・・というような、非常に厳しい選択を余儀なくされます。

後継者を特定し、いかに引き継いでいくか、という意味での事業承継問題は、多くの議論がなされ、研究もアドバイスもされているところではありますが、同様に重要なのが、後継者を支える経営幹部です。

企業経営者の高齢化にあわせ、経営者をサポートしてきた番頭さんはじめ、事業のコアを担う人材としての営業担当、製造担当、商品開発担当、管理担当などの各ポジションの社員が、企業経営者と同様に高齢化してきてしまっているところも、数多くあります。

一方で、長年同じ人が営業部長を務めてくる中で、二番手になる人はずっと課長にとどまってしまいます。

結果、部長として組織全体を見渡す経験が足りず、営業担当役員のポストを引き継ぐには力不足、というケースも多くみられます。

また、昨今の第4次産業革命と言われるような、変化のスピードが極めて速い中、従来の営業スタイル、製造の考え方、商品開発の在り方では、時代にマッチした経営に向けた動きが取れない、ということも問題です。

最近は、「ベンチャー型事業承継」という考え方が脚光を浴び始めており、事業承継のような世代交代に合わせてビジネスモデルを大きく作り変える、また全く新しい分野にチャレンジする、という動きも見られますが、これも若い後継者がそのような意識を持つだけでなく、新しい時代の考え方を理解し、その時代をリードできる人材を登用することが必要になります。ただ、社内人材ではそのような人を手当てするのは難しい。かといって、地方の中小企業では、なかなか地域の中で優秀な人材を確保することは至難の業と言えましょう。

一方、大企業においては、団塊の世代が退職を迎え、これからバブル採用世代の大量の社員が50代を迎え、会社の中でポストから外されていく時代になっていきます。

まだまだ実力はあるのに、やればできるだけの体力もあるのに、十分な仕事が与えられない、というもったいない時代です。

単にリタイヤしてゴルフ三昧の毎日を送りたい、と思っていない人も多いはず。今まで仕事で培ってきたノウハウを、少しでも社会に還元したい、貢献したい、そんな思いを持ちながら、自ら就職先を探せないでいる人も多いと思います。

こんな人と人、企業と企業をつなぐため、人材関連サービスの会社では、大企業経験者を中堅中小企業などに顧問や非常勤社員として派遣する、というビジネスにチャレンジしているところも出てきました。

たとえば、大企業でグローバルビジネスを担当していた人が、地方のファミリー企業の海外進出のお手伝いをする。電機メーカーに勤めていた人が、地方の部品メーカーの顧問として営業をサポートする。

大企業で勤めてきた人は、自分が持っているノウハウや経験、人脈が思う存分活用できるチャンスを与えてもらえて、かつ一定の報酬がもらえる。

地方のファミリー企業の側としては、自社内や地方の人材ネットワークの中では得られなかった人脈、ノウハウを持った人にサポートしてもらうことができる(常勤というと来てもらえないような人材でも、月に数回というレベルなら来てもらえる!)。

派遣される人、受け容れる会社、そしてファミリー企業経営者、三者がそれぞれメリットを享受できる、まさに「三方よし」ではないでしょうか。

人をつなぐ、会社をつなぐことで生まれる価値、資本が、本当の「ソーシャルキャピタル」ではないかと考えます。それぞれの持っている力を「ファミリービジネスの永続化」に向けて投入することで、日本経済のさらなる活性化につながるのではないでしょうか。

私自身も、そんな思いを持ちながら、ファミリービジネスの企業経営者とのお付き合いを深め、幅広いソリューションをご提供してまいりたいと思います。

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