FBAAとファミリービジネス研究

FBAA理事長の武井一喜です。今月からコラムを担当させていただきます。

FBAAは2012年に設立した、ファミリービジネス・アドバイジングのわが国での定着を目指す非営利団体です。
今回は、FBAAのコンセプトの元になっているファミリービジネス研究のお話です。
(以下、ファミリービジネスをFBと略します)

本格的なFB研究は、1980年代に欧米で始まりました。
相続税の負担が日本と比べて少ない米国では、1950年代から主に小規模ビジネスのリーダーシップの交代(事業承継)の研究が行われていました。
80年代に入り、ある組織開発学者の論文を契機に関心が高まり、1986年にアメリカでFamily Firm Institute(FFI)というFBの学会が設立されます。
設立メンバーは、組織開発、組織心理学、経営学、社会学、ファミリーセラピーなどの学者、実務家で、学際的な研究が進められてきました。
その後、コンサルタント、銀行家、会計士、弁護士などが参加する組織となり、学会誌 Family Business Reviewは現在では経営学系の10大論文誌の一つとされ、FBは学術分野の一つとして認められています。

FBが研究者の注目を集めた背景として、過去の経営学では、家族経営が規模を拡大し、専門経営者を雇い、上場会社になり、創業ファミリーの手を離れるのが健全な発達段階とされてきたのですが、現実には創業家が長期的に所有と経営を担い、経済全体の大きな部分を占めていることがあります。
さらに、事業をファミリーの付属物のようにとらえる見方や、ファミリーとビジネスを別々のものとする考えは、実態を正しく把握する見方ではなく、ファミリーとビジネスが合わさった、一つの大きなシステムとして見るほうが実態を正しく把握することができるという見解が主流になったことにあります。

その後研究が進み、FBの方が業績がよく寿命も長いこと、ファミリーガバナンスや、社会情緒資産という概念も整理されてきました。

FBAAはこのような観点から、世界のFB研究の成果やFBコンサルタントの知見を日本の実情に合わせて咀嚼して、ファミリー、ビジネス、オーナーシップの全体を視野に入れたファミリービジネス・アドバイジングを提唱しています。

「ファミリービジネス」という言葉は、FBAA設立の2012年時点ではほとんど聞くことがありませんでしたが、今ではメディアにも頻繁に登場する言葉になっています。FBAAもこのことに一役買っているのではないかと思います。

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