ファミリービジネスの「問題解決」から「問題の癒し」へのシフト

日頃は株式会社アネゴ企画・同族経営パートナーズとして 経営者や組織のリーダーを中心に、 エグゼクティブコーチとしてリーダーの軍師として、 主にリーダーシップ開発と組織づくりの観点で サポートさせていただいています。 今回は私たちがよく接する組織にヒントを得て寄稿させていただきます。 テーマは、「問題の解決」から「癒しへのシフト」についてです。

経営者やリーダーがリーダーシップを発揮しようとする時、 時にその組織はまるで生き物のように存在感を示します。

  • 企業の大きな変化や新しい取り組みに伴う抵抗の力
  • リーダーの交代による現場の混乱や反発
  • 風土や企業の歴史や文化が生み出す閉塞感や停滞感
  • 企業やチームが受けている見えないプレッシャーによる人間関係の悪化
  • すでに不在である重要人物の悪しき影響 ・過去において、同じパターンでトラブルや問題が繰り返し起きている

ほんの一例ですが、これらはどこの企業でも起こりうる問題です。 そして、リーダーにとってはなかなかこの試練から抜け出せずに リーダーシップが発揮しづらい状況は改善されないままとなります。 その状況下で人が離れ、業績の低下などが起きると、 直接経営のリスクにつながってしまいます。 よく世代交代がうまく行われない代表的な問題です。

だったら関係者が直接腹を割って話すのが筋ですよね。 しかし、それがなかなか難しいのが組織であり人間です。 ファミリービジネスはスリーサークルモデルに見るように、 ステイクホルダーの存在(関係)が分かれているので さらに難易度が高い関係の一つだと考えられます。

There is an elephant in the room. (部屋の中に象がいる!?)

組織の問題を見立てる時、我々専門家の間にはこんな例えがあります。[Elephant in the room.] これは、そのコミュニティーの中で触れてはいけないタブーのことを指します。

イメージしてみてください。 みなさんの職場に大きな象がいるのにも関わらず、 誰もそのことについて触れない・話さない・見て見ぬ振りをしている状態を。 明らかに邪魔でしょうし、避けたり刺激を与えないように遠慮したりしていて、 人々が自分らしく実力を発揮できないことは 容易にご理解いただけることでしょう。

この「象」は、ファミリービジネスの中で言うところの葛藤です。

  • 問題を生む根本的な構造が理解されていないので人が振り回される
  • 除外されているメンバーの存在が巻き起こす問題
  • 秩序が整っていないことで起きる不安や不満 ・不平等さ

など、この「象」の存在を見てゆくと、 組織の中にある様々なことが見えてくるのです。

Sympathize with the elephant. (象に共感する)

組織のタブーはタブーだからこそ話し合えないわけです。 しかしながら、タブーと言っても、 そのタブーのほとんどには何かしらの善意や想いや願いがあります。 やむを得ない事情や、誰かを守るために わかっていながら止むを得ずということもある。 特に組織を永続させるために過去に起きたできごとについて そのことを理解するという姿勢は、 問題そのものを癒すことにつながり、 人や組織に新しい視座や力を与えることにつながります。

ぜひ、ファミリーガバナンス・コーポレートガバナンスを強化するために 施策を行うのであれば、こんなことを話し合ってはいかがでしょうか。

  • 組織の永続の陰で犠牲になった人のことを考え、話してみる (誰かの犠牲になった、搾取された、居場所が無くなったなど)
  • 問題そのものの構造と、それを引きお越している原因について (人を責めないで、どんなことが引き金になっているのかを話す)
  • 普通に考えればいるはずなのに、いない人の存在について話す (早く亡くなった、残れなかった、外された、居場所がなかった)
  • 不在の人の存在 (強い影響力を今でも残している、去ったことを十分に悲しまれなかった)
  • 事件や騒動の主たるメンバーの当時の願いや想いや責任について

特に風土や文化の問題は、現在よりも過去にヒントがあります。 問題そのものの解決はできずとも、 過去や問題そのものを理解しようとすることで、 企業が誰かの強い想いによってこれまで継続することができてきた事実を 知ることができます。 その歴史を知ることが、 今に生きる人への新しい何かを生み出してゆく力となるはずです。

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