兄弟経営をどう考えるか

私は、大学卒業して以来、中堅・中小企業向けの経営コンサルティング(財務中心)を経営戦略研究所で行っております。

8年程東京事務所で勤務し、10年ほど前に福岡事務所を開設し、現在に至っております。

物事には原理原則、セオリーというものが必ずあります。夫婦関係がうまくいく原理原則と逆に破たんになる原理原則があるのと同じように、会社を成功に導く原理原則もあれば会社が倒産する原理原則もあります。

当研究所ではその原理原則の追求と実践により、クライアントを倒産させないことをミッションとしております。

さて、コンサルタントという仕事をしているとよく聞かれるのが

「兄弟経営ってうまくいかないと言われますが、どうなのでしょうか」

という質問。

我々の答えは「兄弟経営は原則的に失敗する」ということです。ハイ即答します。

「でも毛利元就の三本の矢のように、兄弟仲良く力を合わせれば・・・」。

世の中の兄弟経営にかすかな望みを与えているのが、こういった兄弟が仲良く力を合わせれば何とかなる、という考えではないでしょうか、

これは二つの視点から誤りです。

一つは、三本の矢の話は歴史に詳しい方はご存知でしょうが、三人で一つの城を守ったのではなく、毛利家を継いだのは長男1人、二男三男は養子として別の家に入ってた、ということ。

つまり現代に置き換えれば、長男が会社を継ぎ、二男三男は別の会社で事業をしていたということです。

もう一つは、元就が息子たちへあてた文書によると、兄弟仲良くというのは、儒教でいう「悌」の内容そのもの。つまり、仲良くするためには、長男は弟たちを親心をもってかわいがり、弟たちは長男の言うことに従いなさい、ということ。

さて戦後70年強が経過し、平等意識が普通になった現代、兄弟間でこうした儒教思想が現実的に果たして通用するでしょうか?

ということで、兄弟経営、一つの会社を兄弟で経営していると、平等意識が普通の現代では途中でけんかになり原則的に失敗します。

ただし原則にも経験上数少ない例外があります。

(1) トップ(長男)が強烈なカリスマ性をもっていること

トップの能力がきわめて高く、弟たちはそれに従わざるを得ないケース。こうした会社はトップの能力の高さから、通常の利益率ではなく、売上高経常利益は10%を超える極めて高い利益率を維持しています。

(2) 兄弟だけでなく多くの親族が会社に関わっていること

このケースは業歴が古い会社が多いのですが、某米菓メーカー、某地方百貨店は、株主、取締役として多くの親族が関与しており、親族の中に仲裁役やアドバイザー的役割をする方がいたりして牽制が効き、うまくいくパターンです。

(3) 本当に仲がいいケース

前述した「悌」を子供のころから親から教え込まれており、本当に仲がいいケース。某食品メーカーは、創業者の死後、母が社長を務め、次に長男、次に次男、現在は長男の息子が社長を務めていますが、面倒見の良い長男と兄貴をいつも立てる二男の構図がはっきりしています。

また、聞いた話で、いまだ検証はしていないのですが、富山の企業にはこのパターンが多いそうです。仮に兄弟は仲良くても、その嫁たちが口を出すようになり、仲が悪くなるパターンが多いですが、富山という地域は男尊女卑思想が強く、二男三男の嫁というのは

「長男は経営では絶対で、とにかく口出しを一切するな」ということをとくとくと説かれるそうです。

上記(1)~(3)に当てはまらない限り、兄弟は別の会社で事業をすべき、というのが原則と考えております。

メンバーの皆様方の中で、もし他にケースをご存知でしたら、ぜひ情報共有のためにも教えていただきたく思います。

最後に補足です。よくある誤りとして、一つの会社を製造会社と販売会社に分社して製造を長男に、販売を二男に任せる、これはうまくいきません。

例えば長男が酒蔵経営、二男が酒販売店経営、こうしたケースであればいいのですが、例えば食品製造卸会社が単純に営業部隊を切り離したような分社化では、そこで仕切り価格をどうするかでもめますし、果たしてその仕切り価格に客観性など求めることができるでしょうか。

分社してうまくいくケースとしては、例えば全国小売展開している会社で、東日本は長男が、西日本は二男が経営するといった場合で、完全に独立して経営ができるような場合でしょう。

また前提として、経営でもめるというより相続でもめないためにも、株の移動は生前に行うのが望ましいのは言うまでもないです。

原則は後継者に集中なのでしょうが、会社の内容によっては分散させておいたほうが良い場合も多々あります。特に優良企業ほど。この話になると長くなりますので、また別の機会に。

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