ファミリービジネス経営者が互いに学び合う場
現在、東海地区の同族企業の経営者及び後継者を対象とした「名古屋ファミリービジネス研究会」を主催しています。今年で7年目を迎える研究会で年6回、半年間のプログラムを提供しています。私自身がFBAAで学んだファミリービジネスの価値を提供すると共に、ブランディング、非同族幹部の育成、ファミリーガバナンス、事業承継などその道のプロとなるブレーンと一緒に企画し運営しています。また、近年はゲストとして各業界で活躍するファミリービジネスの経営者を招き、講演会も実施。過去には株式会社オーダースーツSADA代表の佐田展隆氏、株式会社エスワイフード代表の山本久美氏、株式会社アワーズ代表の山本雅史氏を招き、一方通行にならないひざを突き合わせた講演会も開催してきました。
ここで改めて「名古屋ファミリービジネス研究会」の特徴を説明します。毎年15名ほどのファミリービジネスに関わる方に参加頂き、事務局、講師、受講生が一体となり、全体を盛り上げるという他に例を見ない研究会というのが大きな特徴でといえるでしょう。講師のほとんどは事務局も兼務しているので、自分の担当以外の会も出席し、参加者と一緒に学びます。
参加者も多岐に亘ります。中小企業のオーナーの立場の方が多いですが、製造業からサービス業、介護福祉関連、美容室チェーン、人材派遣業まで様々な業種の方が参加しています。お互いの信頼関係を構築するために、あらかじめ機密情報の遵守等を盛り込んだ誓約書を記入頂きます。また、グランドルールも定め、それに従った運営を行っています。それにより安心、安全な場を担保し、お互いがなんでも言い合える仲間となっています。
すでに7年目を迎えた会ですが、参加者のうち半数はリピーターになります。毎年コンテンツや講義内容はアップデートしますが、大きな流れは変わりません。それでもこの会で得られる価値は大きいとリピーターから頂く言葉から判断しています。リピーターが新しく参加された方に積極的に話しかけ、この会のメリットや魅力を伝えて頂けます。
「名古屋ファミリービジネス研究会」ではよりよい関係性を作るためにDay1とDay6(最終日)は予め懇親会を含めた申し込みを頂いています。半日間の講座ではしっかり学び、終了後は酒を酌み交わしながら仕事観や家庭観について語り合う。そこに事務局や講師も加わり深堀も行うため、初回から熱い議論が繰り広げられ、同時に和気あいあいとした雰囲気も醸成されます。その結果、Day2以降もほぼ全員が懇親会に参加し、今、抱えている課題や取り組みについて共有し、お互いにアドバイスし合う関係性が自ずと作られていきます。営業目的はありませんが、互いの事業で取引が始まるケースも珍しくはありません。
学び、懇親を深め、いい関係性を作る。これはとても大切なことですが、これだけでは終わりません。毎回、課題が出され、Day6(最終日)は成果発表会と全体の振り返りを行います。成果発表会は参加者全員が行います。一人20分程度、各回で学んだ内容をまとめ、自社の取組みを発表します。ファミリービジネスらしく最後は「事業承継計画」、そして「自社の●年後を考える」で締めます。発表後は講師及び参加者からフィードバックをもらいます。温かいメッセージもあれば、時には厳しい指摘もありますが、当事者にとってはいい反省材料であり、新たな気づきにもなっていいます。誰もが熱く語るため、持ち時間内に終わることはまずありません。いい意味で時間延長してしまうのが、最終回の発表です。講師も参加者もひとりの仲間として自分の考えを共有しています。半年間お互いに学び合い、語り合うことが出来た信頼関係の証ともいえるでしょう。
意外とこうして自分をさらけ出し話をする場は少ないと感じています。同業種の集まりであれば会社のマイナス面を晒すことはできないでしょうし、関係性が薄ければ自分の未熟さや弱さを披露することはできません。それを気兼ねなく前向きにできるというのがお互いにとってのメリット。毎年、半数の方がリピーターとして参加されるのも学びだけでない居心地の良さと温かさと捉えることができます。
ここ最近、ビックモーターやジャニーズ事務所の報道でファミリービジネスのイメージは悪い方向に向かっています。現在、私が講師を務める大学の学生も同様です。ファミリービジネスを授業で教えていますが、同族企業は会社を私物化し、自分勝手な経営を行う、そんな理解をする学生も少なくありません。また、そんな報道に惑わされ、自信を失っている経営者や後継者も存在するでしょう。
そんな時だからこそ、私たちはいろんな場を通して、ファミリービジネスの大切さを訴求しています。それは会社に関わる一人一人が誇りを持ち、事業を継続する重要性を感じてもらうことであり、学生にはその存在価値を理解してもらうことです。誤解を解き、本来のよさを客観的に示すことが今、私たちに求められています。私たちファミリービジネスアドバイザーはそんな環境を作り外部から支援することで、ファミリービジネスが発展する場を作っていきます。私たちの活動範囲はまだまだ限られますが、この東海地区に数多く存在するファミリービジネスを少しでも盛り上げる活動を今後も行っていきます。
Author Profile
1966年生まれ。大学卒業後、株式会社名大社に入社。 営業部門にて東海地区の企業に対し新卒採用、中途採用の支援を行う。各部門の責任者を経て、2010年5月に非同族4代目として代表取締役社長に就任。2022年6月より現職。経営者向けセミナー、人事担当者向けセミナーの講演、大学内で授業も行う。2017年より東海地区の同族企業の経営者、後継者、幹部を対象とした「名古屋ファミリービジネス研究会」を運営。