求心力を高める創業家のブランドストーリー

みなさま、こんにちは。

FBAA7期 株式会社オレンジフリー 専務取締役の蒲原(かもはら)くみです。

私はブランディングコンサルタントとして、企業のブランド戦略構築のサポートとその戦略を実行するための現場レベルの運用サポートをしています。

業界トップの歯科医療商社、関西の大手法律事務所、コンクリート、ゴム、クレーンなどの製造業、製薬系の乾燥剤メーカー、旅館、ホテル、飲食店、自動車学校、 病院、クリニック、大手介護グループなど、様々な業種の企業の中に入り現場の方たちと苦労を分かち合いながら仕事をしてきました。

これまでに200以上のプロジェクトに関わらせていただきましたが、その多くがファミリー企業です。どの企業も個性に満ち溢れて輝いています。その魅力の源泉は、ファミリーならではの価値観、判断基準にあり、それが社風となって企業全体を包み込んでいるように思います。

長期間サポートさせていただいている顧問先様(長いところで15年になるところも)では、ファミリーの歴史を伴走させていただいている、そんな気持ちがいたします。

ある旅館のケースでは、2代目であるお父様の経営方針に納得ができず、長い間、仲違いをされていました。ところがお父様の具合が悪くなり、3代目のバトンを渡されます。なかなか自分の思うように従業員は動いてくれない。悩んだあげく創業者、2代目はどのように経営と向き合ったのかを考えたと言います。

苦労して立ち上げた祖父の人生、病床にある父の人生から自分のルーツを辿った時に、初めて感謝の念が生まれて嗚咽したそうです。自分に渡されたバトンを次の世代にも大切に繋いでいく使命があるのだと気づいたと話してくださった社長は、社員を大切にする大家族的な社風で経営されており、コロナ禍でも社員と一致団結して頑張っておられます。

製造業3代目の女性社長は「父は娘の私に継がせるつもりはなかったけど、私は継ぎたかった。父のことが好きだったから。私は祖父とも父とも一緒に仕事をしたことがないから、我流でやってきて本当にこれでいいのかと迷ったことが何度もあります。そんな時、助けてくれたのが業務日誌でした。祖父の代でやったこと、父の代でやったことがすべてこの業務日誌に書いてあります」」と古い日誌を見せてくださったことがあります。

会社で何が起きて、その時どう対処したのか、判断基準や思考の道筋が細かく記されていました。この日誌が社長の背中を押し勇気づけていることがわかり、経営者が亡くなってもその精神は企業の中に残り続けていることに感銘を受けました。

経営者が高齢化し、2代目から3代目への事業承継のタイミングが近づいている食品加工業では、長年のギクシャクした親子関係から、顔を合わせてもうまく話せない状態でした。同じテーブルについていても、一方が話し出すと、もう一方はそっぽを向くといった状態で対話になりません。

この時は時間をかけて両者の想いをヒアリングし、親子の溝を埋めるお手伝いをさせていただきました。ファミリー企業には第三者の力を必要とする場面が少なからずあるように思います。

このような家族のヒストリーは汚点と感じる経営者の方が多いせいか、あまり表立って語られないものです。しかし、私は会社の歴史はすなわち創業家の物語であり、全てに意味があると考えています。紆余曲折や試行錯誤、失敗とそこから立ち上がるさま、これらの物語は必ず人の心を打ちます。

そのように考え、次世代リーダー向けの教育研修に創業家ストーリーを使ったことがあります。社長にヒアリングし、目を覆いたくなるような出来事も、家族の確執も、苦難を乗り越えて手にした成功も包み隠さず創業家のブランドストーリーとして書き起こしました。

当日は社長の口から語っていただきましたが、今この会社があるのは、バトンをつないできた経営者と、その下に集まったたくさんの人たちの思いと努力の結晶であるということがわかり、ぽろぽろと涙する社員が何人もいました。「経営者の大変さがわかり、到底自分にはできないと思った」「社長の覚悟を知って驚いた。全力で支えたい」「創業家がより身近で大切な存在になりました」などの感想が寄せられ、経営者の求心力が一気に高まったことがわかりました。まさに創業家ブランドが、社員の心の中に芽吹いた日だったと思います

このように日々ブランディングの仕事をしている私ですが、FBAAで学び、仕事に奥行きが出たように思います。私はブランディングのフレームワークとFBAAのスリーサークルモデルを掛け合わせたメソッドを作っているのですが、これにより企業の過去・現在・未来が手に取るようにわかり、スムーズな解決法を提示することができています。経営者にとっても、支援業の方にとっても、このような深い学びが得られる場は貴重だと思いますので、ぜひFBAAの扉を叩いてみてくださいね。

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