ファミリービジネスと番頭

7期フェローの西田です。私はファミリービジネスの2代目です。

ファミリービジネスの在り方を学び、私の代でより良い形にし、次の代にどう継承するかを研究しながら日々実践しております。

私は日本のファミリービジネスを強くするための経営制度として日本企業固有の補佐役である番頭に注目しております。

番頭自体は、国内の治安が保たれ都市が急速に発展するようになった江戸時代初期に生まれたといわれています。

その後、日本の置かれた状況に合わせて役割を変化させ、多くの企業を支え、現在に至っています。

番頭の基本的役割は大きく下記の4つといわれています。

  1. トップの弱点を補い、トップが働きやすい環境づくりをする。
  2. トップに非がある場合、その非をいさめ、軌道修正をする。
  3. トップの意思決定と決断を的確な情報と提言をもって補完する。
  4. トップの分身として、第一線に立つ。

その他にも、次のトップを教育し、補佐する、など実際はより多岐にわたり、奥も深いと思います。

また番頭は大きく分けて下記の5つのタイプがあるといわれています。

  1. 大番頭:業務全般を掌握し、トップを諫め、暴走を阻止する。後継者の教育係でもある。
  2. ご意見番:業務に精通し、先鋭的な意見を持ち、トップに真正面から物申す。同時にトップの良き理解者でもある。欧米では社外取締役の立場にあたる。
  3. 女房役:トップの忠実なる補佐役。トップの経営理念や人間性を誰よりも理解し、考え方を体現できるパートナー。
  4. 右腕型補佐役:トップの分身として、第一線で旗を振り、業務を推進する。
  5. 懐刀:黒子型補佐役でトップの特命の遂行にあたる。経営力を磨く登竜門といわれている。

これらの役割を経営幹部で分担してトップを補佐する仕組みがいわゆる番頭制度です。

ただし番頭という役職が実際にある会社は珍しく、たいていは正式な役割として定義されていません。

番頭という役割は、トップの信頼と番頭自身の献身的な振る舞いを見て周りの人間が決める名誉職ともいえます。

トップと番頭の信頼関係も長い時間をかけて、ともに汗を流し、苦労をともにすることで、構築できるものと考えています。

昨今のビジネス環境は、コロナパンデミックしかり、非常に変化が激しく、経営判断を一歩間違えれば、倒産、廃業のリスクが格段に高まっています。

資金・人材のリソースが限られる中小企業では、なおさらです。

限られた人材を、優秀な経営思考持った補佐役に育成できるかどうかの指標としても、この番頭という制度は大変参考になると考えています。

トップとして経営幹部、もしくは将来の経営幹部候補にどのように育って欲しいかを考え、伝え、接していかない限りは優秀な番頭が企業内に育つことはないと思います。

それと同時に、トップ自身が番頭を惹きつけられる筋の通った行動を取り続けることも、優秀な番頭がその企業で育つ上で、大変重要だと考えます。

ファミリービジネスは通常の企業と比較して、トップの経営任期が長いことも番頭制度を行う上で相性が良いと思います。

長い経営任期の中で、息のあった番頭がいることは企業にとっても経営者にとっても、次世代トップにとっても、そこに努める社員にとっても、大変心強いもので、ファミリービジネスの発展と永続性に寄与するのではないでしょうか?

また、今の時代にあった番頭の在り方を考える上で、もっとも重要なのは、実際に企業で番頭という立場にいる方々とリアルに意見を交換しあい、その心情や苦労、喜び、トップへの思い、会社への思いを聞くことだと思います。

私の最近の活動として、FBAAのフェローメンバーを中心に構成する『日本番頭支援協会』に東京支部長として参加しています。

この会は過去の番頭変遷を振り返り、これからの時代に合った番頭スタイルを確立し、全国の番頭の一助となりたいという思いで発足されました。

支部は東京・大阪・京都と3つの地域にあり、現役の番頭、経営者、将来の経営者候補、番頭候補、アドバイザーの方々が日々の業務について、月に1回程度の頻度で、お互いの立場での考え方をざっくばらんに相談し合い、研鑽しています。

私自身、経営者として、番頭の方々と意見交換をし、自社での幹部社員、将来の幹部社員候補との接し方の参考にさせていただいております。

番頭の方々のご意見を聞いていて1つ言えることは番頭の力を引き出し、育てられるのは、筋の通った人間的な魅力のある経営者のみということです。

私も番頭の方々の意見を聞き、自身の振る舞いを顧みて、より研鑽し成長してまいりたいと思います。

今後も日本番頭支援協会の活動を継続し、企業経営と人材育成の気づきを得たいと考えております。

もしこの活動にご興味のある方がおられましたら、ご連絡をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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