FBAAとの出会いとこれから

6期フェローの清原 大(きよはら だい)と申します。

私は、大手監査法人(主に上場企業を監査する公認会計士主体の組織)に約20年勤務した後、2019年1月に独立しました。

現在は、個人の会計士として、コンサル会社の経営者として、また社外役員として、企業などの監査や調査、諸々の相談を受けることを生業としています。

FBAAとの出会い

2013年、監査法人に勤務していた私は、仕事に役立つ本を探して、大阪梅田の紀伊國屋書店をうろうろしていたところ、「長く繁栄する同族企業の条件」というタイトルの本に引き寄せられました。

当時、私の担当していたクライアントは皆、いわゆる同族企業だったので、どんな条件を満たせば長く繁栄できるのか、担当クライアントは条件を満たしているか、などとワクワクしながら本を手に取り、買って帰りました。

本を読み進むにつれて、さらに詳しく学びたいという思いが募り、気付けば本の中に書いてあった協会(FBAA)に連絡を取り、講座を受講しようとしていました。

ところがその時期に、相当タフな作業が想定される、新規株式公開(いわゆる上場)を目指す大手同族企業への出向が決まったため、受講を一度は断念しました。

3年間の出向期間は、出向とはいえ、監査法人のように外部からではなく、同族企業の中に入っての業務です。

監査法人に勤務する会計士に期待された業務内容なので、当然かもしれませんが、スリーサークル(所有、経営、家族)でいえば、「経営」、中でも管理業務が主でした(上場準備では諸々の文書化作業など管理部門に短期的に負荷がかかります)。

そんな中で、上場準備を、会社の全体を理解する好機と捉えた異動ではなかったかと思いますが、会長のご子息が私の上司になるという幸運にも恵まれ、ファミリービジネスに対する理解を深めることができました。

出向先から2016年に監査法人に帰任し、監査業務にもどることになりました。

しかし、私の出向期間中に監査法人の業務はすっかり変化していました。

2015年に発生した東芝の不適切会計を起源として、品質管理重視へと舵が切られ、膨大なチェックリストをこなし、何度も調書のレビューを受ける業務となっていました。

ただ、そんな中でも、私は出向前と変わらず同族企業を主に担当していたこともあり、再びFBAAでの受講を検討していました。

丁度、講座が大阪で開始されるタイミングで、ハードルが下がったこともあり、ついに正式申込み、受講へといたりました。

事務局の方をはじめ、皆様に色々とお世話になり、晴れて6期フェローとなることができました。

この講座を受講していく過程で、もっと会社に寄り添い、共に繁栄することを目指したいとの思いがより強くなったこともあり、独立することになりました。

これから

私が監査法人時代に担当していた同族企業は、同族企業の中でも、上場企業もしくは上場企業並みの会社で、中には江戸時代から続いている会社もありました。

これらの会社には、概ねしっかりした経営理念があり、監査法人などの外部からの意見をしっかり聞く風土がありました。

これは、まさに長く繁栄する同族企業の条件の一部だと思います。

上場を目指す会社のなかでも、うまくいく会社の特徴として、元々そういう傾向があると感じます。

この傾向は上場へと向かう過程で、より一層強化されていきます。これは、上場するためには、証券会社や取引所の審査を受ける必要があり、審査の過程で、
(1) 成長性・収益性
(2) 内部管理体制
(3) それらを支えるガバナンス体制
が問われます。

後継者対策なども検討する必要があり、会社は相当にコストをかけて対応していきます。

これらの取り組みの中には、上場を目指していない会社であっても、同族企業の脆さから逃れるために参考になることが多いと思います。

実際に上場してしまうと、一般の投資家が現れたり、創業者利潤が一部実現するなどの環境変化があったりと、これまでとは異なった方法で、中長期にわたってこれらを継続できるように仕組む必要が出てきます。

コーポレートガバナンスコードなど、持続的な成長に向けての取組みはありますが、上場企業であっても、方法論が確立されているとまでは言えない状況です。

ファミリービジネスの世界は所有と家族と経営が複雑に絡んでいます。

強みも弱みもお互いに理解している家族という最強のシステムでビジネスに真剣に取り組んでいる同族企業は、ある意味で最高ですが、非常に危険でもあります。うまくいかなくなると、仕事だけではなく、家族をも失う危険性があるからです。

家業のある家に生まれ、家族として生活しているだけで、ある種の英才教育を受けていると言えると思います。英才教育を受けているので、その環境で生きて行くことが幸せな可能性が高いと思いますが、適性がない場合には全く違う道を進み、家族として幸せに暮らせることも大事だと思います。

ビジネスはキャッシュフロー創出能力であり、中長期を見て、失敗できる余裕は必要ですが、息子、娘だからという理由だけで失敗し続けるわけにはいきません。

所有、家族、経営について、真剣に取り組んでいるクライアントと語り合うことで、バランスを追求し、共に取り組んでいけるアドバイザーを目指したいと考えています。

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