神社とファミリービジネス

私の実家は神社です。父は宮司と務め、実家は神社内にありました。以前の私は「行事ごとに実家を手伝いに行く」程度で、経営には殆ど関わっていませんでした。

しかしFBAA開講1か月前に、宮司である父が急逝し、家族としての相続とともに、神社の事業承継も待ったなしの状態になりました。そのため、FBAAでは主にファミリーの一員の視点で学ぶことになりました。

今回は当時を思い出しつつ、神社の家族経営を考察します。

1.神社の経営とファミリーの関係性

文化庁の『宗教年鑑 平成30年版』によると現在、日本国内に約8万の神社があります。また神職は約2万人(神社本庁登録の神職者)です。

そしてこれらの大部分が家族経営です。

私は典型的な家族運営の神社に生まれました。

当時は祖父が宮司で、父と、叔父が役職を務めており、他にも数名神職がいました。いわば家族が経営層を占めている状態です。

また、裏方業務や掃除、参拝者の応対は祖母、母、叔母が担っていました。私も子供の頃から、休日や正月は巫女として神社を手伝うのが当たり前でした。そして実家は神社の境内にあり、社宅で集会所管理人も兼務しており、いつも誰かしら家に出入りしていました。いわゆる職住一致状態です。

そもそも神社は宗教法人であり、神職は基本的に給与制のため、オーナーの要素は本来皆無です。土地や株式のような相続財産もありません。しかし役割として、日々のふるまいは「神社の子」として社家(=神社関係者の家柄)を体現することが常に求められていたように記憶しています。

2.家族経営の課題

その後祖父が亡くなり、父が新宮司に就任しました。叔父も昇格し、体制は盤石となるはずでした。

しかし、父と叔父の間で意見の相違が多発し、叔父は退職しました。

その後新しい神職が奉職するも、退職が続きました。今まで家族で運営していたので、阿吽の呼吸で仕事が回っていたため、体系だった組織運営や人材育成ができなかったのです。そしてその後父が病気になりました。

ここでの問題点は

  • 家族と職場の関係性が混在していた(兄弟仲が経営に波及した)
  • 後継者を育成できなかった(後継候補者が相次いで退職した)
  • 神職は長命かつ生涯現役という「業界の常識」があり、後継者育成を緊急要件と考えていなかった

が挙げられます。

3.ファミリービジネスを学んで考える、今後の対策

私が思うに、神社の運営や事業承継は

  • 損得より信仰心や責務、家族全員での献身が中心である
  • 明確な後継指名や後継教育のプロセスがない
  • 神職資格取得は必須であるが、経営や財務について学ぶ機会がない
  • 言語化されていない「行事」で家族経営としての一体感を強化している

などの特徴があり、これが強みにも弱みにもなっているように感じます。

このことから考えると、神社として後継指名した人物には、FBAAのような異業種の仲間と学ぶ場を持つことが望まれます。

そして、後継者育成や事業承継を戦略的に行うことで、家族経営を「強み」として更に活かしていけるのではと考えます。

4.最後に

ちなみに、現在の神社の状況は、親戚が急遽宮司に就任し、中継ぎを務めています。

その間に全国から後継候補を自他薦で募集し、現在はその方が家族で境内に移住し、新しい家族経営の歩みを進めています。

家族経営から家族経営への承継となる予定です。

これは父の急逝がもたらした、新しい事業承継の形となるでしょう。

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