会社を永続させるために必要な不動産に関する対策

ファミリービジネスを繁栄させるために必要な条件はFBAAでの学びのとおり様々ありますが、スリーサークル(オーナーシップ、ビジネス、ファミリー)の観点から各要素を充実させる必要があります。

私は不動産鑑定士であり、不動産に関する視点をベースに物事を考える習慣がついておりますので、その視点からファミリービジネスの永続性に対して何かアドバイスをシェアできればと思いつつ本稿を作成しております。

まずは簡単に私のご紹介から始めさせていただくと、私は大阪で不動産鑑定士の事務所を共同経営しております。不動産鑑定士としての資格を取得し業界に入ったのは私が33歳のときです。

最初に勤めた会社は鑑定業界大手の三大法人の一つで、そこでの仕事は規模の大きな物件(1000億円を超えるオフィスビルや大阪人なら誰もが知っている商業施設等)が中心で、クライアントも上場会社や金融機関を含む大企業が大半でした。

それから約10年後に独立して、今の会社で約2年が経ちましたが、現在のクライアント様は上場企業や金融機関はごく僅かで、大半は中小企業となっております。

最近中小企業の経営者様とお話をすることが増えてきた中で、不動産に関して何か我々ができるアドバイスがあるのではないかと感じるようになってきました。

これから述べることは、ファミリービジネスを永続させるための本質ではありませんが、不動産に関して整理整頓しておくことで、何かのときの助けになることは間違いありません。

今回は、予防医学的な観点から、不動産に関するアドバイスを2つ記載させていただきます。

まず1点目は、不動産を換金化したいときにすぐに換金化できる状態にあるかをチェックしていただければと思います。

ファミリービジネスを継続させる中で、資金繰りが悪化した際に手持ちの不動産を売却できれば緊急事態を回避できるようなケースも考えられますが、売却しようにも事前に準備をしておかなければすぐに換金化できないケースも見受けられます。

代表的なものとしては、2人以上で所有している共有名義の不動産が挙げられます。

最初は先代社長の単独名義だったものが、代々の相続を経て複数人の共有名義となっている不動産は結構多いです。場合によっては、数十人の共有名義になっている場合もあったりします。

共有不動産は、売却するに当たって所有者(共有者)全員の同意が必要となりますので、共有者同士の人的関係が良好であれば問題ありませんが、他の共有者が売却に反対していると売りたいときに売れないことになります。

一応、持ち分に該当する権利自体を売却することはできますが、その場合は共有状態にある不動産の持ち分の売買になりますので、制約のある不動産に対する買い手の見方は厳しく、どうしても安値での売買になってしまいます(2~5割程度の減価は普通)。

基本的には当初から共有名義にしないことが望ましいですが、現在共有名義になっている不動産については、税務上の対策等を踏まえつつ、単独名義の所有に変更していく等の対策を取っておくことが長期的な視点では得策です。

次に所有不動産の有効活用に関してですが、会社が所有している不動産(土地又は建物)を賃貸しているケースもあります。この場合に問題となるのは、適正価値で賃貸できているかという点です。

不動産の価値が変動するのに応じて、不動産の地代・家賃も変動するのは当然のことですが、賃貸借契約の見直しというものは意外と放置されていることが多いです。

つい先日も、とある会社さんが所有する土地(貸地)について、その会社の顧問税理士さんから相談を受けまして、私の方で賃貸借契約内容を確認したところ、契約から15年程経っているのですが、地代の見直し等を一切されておらず、低廉な地代を収受している状態にありました。

大阪市内の繁華街にある土地(ホテル用地)でしたので、近年、土地価格が相当上昇しており、現行の地代が不相当となっておりました(適正地代の約50%程度)。

所有者さんに対して地代の増額改定を検討した方が良い旨のアドバイスをしておりましたが、所有者さんの意思決定が延びている間にコロナショックが発生し、増額改定を持ち掛ける機を逸してしまいました。

なお、地代が低廉な土地については、万が一売却しなければならないときに、適正地代を収受できている土地と比較して売却価格が安くなることも申し添えておきます。

また、テナントとして土地や建物を借りている場合は、逆に適正賃料よりも払いすぎていないかどうかの視点が必要です。

このように不動産に関するケアをしているか否かで、万が一の備えにも影響がありますので、一度不動産回りをチェックされてみると良いのではと思います。

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