~M&Aに代わる承継手段【手放さない事業承継】のご紹介~

今回ご報告する内容は、「事業承継問題」の中でも特に後継者不在で悩む会社に、M&Aに代わる承継手段として導入を推進している、「手放さない事業承継」のご紹介です。

後継者不在の場合は、一般的に従業員承継(MBO)や第三者承継(M&A)が選択肢として提示されることが多くなっています。

ただし、MBOは「個人保証」や「株式買取資金の負担」がネックとなり採用が困難なケースが多く、M&Aは、抵抗感が薄まったものの、

・将来性のある事業を今手放したくない。

・祖父の代から続いてきた家業を自分の代で絶やしたくない。

・息子は継がないとしても、孫に会社を継いでもらいたい。

・M&Aの対価は本当に適正と言えるのだろうか。

・今まで付いて来てくれた従業員に申し訳ない。

等の理由から、すべての会社に受け入れられる手段ではないと感じています。

MBOやM&Aを積極的に選択しない会社には、これらに代わる承継手法を提示することが円滑な事業承継実現の助けになると考えられますが、その一つに「所有と経営の分離」があります。

「所有と経営の分離」のひとつに、株式を親族に、経営を番頭等に任せる体制がありますが、以下のような問題が考えられます。

① 株主が事業に関与せず、配当を受領するだけになると、会社に関心を持たなくなること

② 会社を支援するアドバイザーが、雇い主である経営陣(=番頭)への情報提供を優先することによって経営陣と株主の情報格差が生じること

③ ①②により「株主の孤立化」を招き、最悪の場合は番頭の暴走や、番頭による会社の乗っ取りに繋がるリスクをはらんでいること

このリスクを抑制するためには、株を引き継いだ親族が、会社への関与を継続することが望まれます。

そのため弊社では、株主側の専属アドバイザーとして「議決権行使の在り方に関する助言」や、「会社の事業や財務内容の報告」をすること等により、株主が会社に関心を持ち続ける仕組み作りの支援を目指しています。

弊社では、このように所有と経営の分離を安定して継続していく仕組みを【手放さない事業承継】と呼んでいます。

上記のような支援を導入したとしても、

「番頭が育っていない会社はどうすればいいか?」

「番頭側の協力を如何に得るか?」等

の課題が残ると考えられますが、親族が所有を維持するメリットとして、

「孫の代で親族が経営に復帰する可能性を残せる」

「親族の関与により長期的視点を維持することができる」

といった、単なるMBOやM&Aに代わる手段という以上のメリットがあると考えています。

また、社長が所有と経営の分離という選択肢に気づき、後継者(番頭)育成や株主保護の仕組みを早期に確立することで、前述の課題も解決可能と考えられます。

更には、「所有と経営の分離」が一般に広く浸透することで、番頭不在の場合に外部から後継者を招聘するための経営者斡旋市場も発展することが期待できます。

手放さない事業承継は、まだ広く浸透していませんが、リスクに対する予防が出来れば十分に機能する手法だと思います。

そして、この手法を浸透させることが、中小企業における円滑な事業承継の促進に寄与するものであると考え、弊社ではこの承継手法の周知と支援に取り組んでおります。

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