番頭の役割 〜No.1とNo.2の役割の違いとは?〜

ファミリービジネスを研究で長寿企業の秘訣を調べていたらそのひとつに「番頭の存在」がありました。

なぜ番頭がいると長寿に効くのでしょうか?今回はそのことについて考えてみたいと思います。

番頭はいわゆるNo.2です。No.2の役割は、ひと言でいうと「守り」。

  • ルールを守っているか?
  • 業績はどうか?
  • 現場の士気はどうか?

などの視点で現場を耐えずチェックしています。

そして、拙いことがあれば「何やっているんだ」「ダメじゃないか」と指摘します。

そして改善がなされると、「よくやった、これからは気を付けろよ」と笑顔で去っていきます。

このとき、起きた出来事すべてを社長の耳には入れません。現場に改善を指示するときも、「ここを改めなさい。社長には黙っておくから」と、現場への配慮を示します。

そのため現場からは「あの人のお陰で社長から叱られずに済んだ。助かった」と感謝されます。

一方で「つまらないことで言いがかりをつけて、そのくせ俺たちに恩を売りやがって」と嫌われることもあります。

つまり、番頭の評価は割れるのが当たり前です。それはちょうど、豊臣政権の石田三成と同じです。彼ほど現場からの評価が分かれた人もいないんじゃないかと思うくらい誰かには愛され、誰かには嫌われました。

現場のために善意でやっていることが、それがそれぞれの立場から見方次第で、憎まれ役にもなってしまう。それも番頭の宿命です。

No.2が憎まれ役を引き受けてくれると、No.1の社長はニコニコしていられます。番頭に叱られた社員に対し「番頭に随分叱られたそうだな。気にするな。次に取り返せばいいよ」と、社長は許す人になれます。

人は、自分の失敗を許してくれる人を信頼し、「この人のために頑張ろう!」という気持ちになります。これが社長の求心力になって会社がまとまります。

No.1である社長の仕事は極論すれば、

  1. 方向を明示して決断する
  2. モチベーションを維持する環境づくり
  3. 後継者を育てる

の3つです。

この3つはいずれも「攻め」ですが、「守り」全般をNo.2の番頭に任せることで、社長は「攻め」に集中できます。

上記の「失敗を許すこと」は、2の一貫です。また、番頭がいるおかげで、2の次の方向性を明示するために取引先や展示会を訪ね歩いて環境変化を先読みするなど、安心して会社を留守にすることもできます。

また3のために、事業承継について学び、自分の次の社長を探したり教育したりするには多大な時間と労力が必要です。それに専念できるのもNo.2に「守り」を任せられるからです。

このようにNo.1は「攻め」、No2は「守り」と役割分担して補い合うと経営はうまく行きます。

このバランスが長寿企業の安定感の源ですが、中には、No.1とNo.2の両方を経験する人がいます。ファミリービジネスの後継社長です。

先代が社長の時、後継者は専務や常務を務めます。このとき、先代が「攻め」、自分は番頭として「守り」役を務めます。

しかし事業承継すると、今度は自分が社長になり、「攻め」を担います。そして、「守り」を番頭に任せます。役割が大きく変わるするのです。

ところがこの変化がわかっていないと、事業承継後に、社長の立場になっても番頭の時と同様に「あれがいけない、間違っているぞ!」とダメ出しを連発してしまうのです。

社長からダイレクトにダメだしされたら、現場の社員は逃げ場がありません。そして「社長=怖い人。社長に叱られるのが嫌だ=言われたことだけやろう」と組織がどんどん消極的になってしまいます。

小言を言い、憎まれ役を引き受ける番頭がいないと、挑戦しない組織になってしまうのです。

特に、先代の社長在任期間が長く、自分の番頭時代が長かった人や番頭時代に経営的に厳しい時代があり、コストカットで乗り切った経験のある人は、No.1になってもNo.2指向が抜けないでも特に注意してください。

よく経営者は「自分はNo.2が向いている」いや「自分はNo.1が向いている」と話します。が、指示される側にしてみてみればその人の適性がどうかなんて関係ありません。

社長はNo.1に求められている役割と行動、専務はNo.2に求められている役割と行動を正しく認識し、その立場で考え行動することがとても重要なのです。

後継者の方は、今自分がNo.2なら、No.1になったとき自分はどのような役割を担うべきか?現社長の仕事ぶりを見て、大いに学びましょう。

また、自分が社長になったときのNo.2は誰が務めるのかを考えましょう。そしてNo.2の育て方や番頭の役割を自分の体験を元に整理し、次の番頭を今のうちから育成しましょう。

頼もしいNo.2は、あなたが優れた社長へと成長するアシストをしてくれるでしょう。

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