ファミリービジネスとブランディング

「ブランディング」は、7〜8年前までは、「十分な経営資源と人材を持つ大企業が行うもので中小企業には関係がない」、或いは「ロゴやネーミング、パッケージ、広告制作を指す」と多くの方が捉えていました。
しかし昨今では「他社にない独自の価値、それがブランドだ」という本質に根ざした認識が中小企業にも広まってきました。
しかし、実際にブランド論を経営に活用できている中小企業はまだまだ少ないというのが実情です。それは構築手法が不明だからです。

そこで私は体系化されたブランド構築のスキームを経営幹部・従業員の皆様にお教えし、企業の方をサポートしながら戦略構築を行う仕事をしています。
最終的に、従業員全員がブランドを主体的に考えて行動するというゴールを設計してコンサルティングを行っています。
このインターナルブランディングに特化した手法は、ブランディングとチームビルディングの両方を同時に手に入れることができるため、従業員の経営参画意識とチームワークが強化され、組織づくりにとても有効に働きます。
プロジェクト期間は、1年〜5年。これまでに大手・上場企業から中小企業まで150社を超えるプロジェクトに入り、様々な経験をしてきました。

ほとんどのケースが、ブランド戦略策定まで非常にうまくいったと思います。ところが、戦略ができて社内の気運も高まり、あとは実行あるのみという段階で頓挫したケースが幾つかありました。
あるエンターテイメント企業では、会長派、社長派に社内が二分され、ある医療法人では、陣頭指揮を取ってプロジェクトを推進していた経営者夫婦の関係が破綻し、また、ある製造業では、プロジェクト時には賛同していたはずの従兄弟が実行段階で反旗を翻しました。
FBAAに出会うまでは、それらの共通項が「ファミリー企業」であることがわかりませんでした。

「なんでこうなるの?!」

私には全く関係がない(と、かつては思っていた)親族の感情的な問題で、みんなが苦労して構築してきたブランド戦略が、ガラガラと音を立てて崩れていく…やりきれない思いが私の中に渦巻きました。

その霧を晴らしてくれたのが、FBAAで学んだ「スリーサークル・モデル」でした。
成功しているファミリービジネスはビジネス、ファミリー、オーナーシップというこの3つの要素と役割があり、これらが緊密に連携しながら一つのシステムとして機能しているというもの。
また、ビジネス、ファミリー、オーナーシップの三つの輪の重なりによって7つのセクターができ、そのいずれかにファミリービジネスの関係者は位置付けられることというもの。

「そうだったのか!」

かつて、やりきれない思いで仕事が終了したクライアントの共通項が、「ファミリー企業」であることを知った私は、登場人物のポジションをスリーサークルに配置して整理してみました。
すると、人間関係や役割が俯瞰でき、疑問に感じていた行動や発言が腑に落ちました。ファミリー間の長年に亘る感情のもつれやフラストレーション。そのことによる対立や依存。
今まで見たことのない角度から、自分の専門であるブランディングを見た時、突破口をひらく新たな方法を複数見出すことができました。

コンサルタントという仕事は、理と情のバランスの上に成り立っています。専門領域の学びと関連領域の学びを融合させ深めることによって、クライアント理解が促進され、さらに良い仕事ができると確信しています。

私はFBAA第7期から、ブランディングの講義を担当させていただいております。
競合企業が多く存在し機能や仕様、品質での差別化が難しい中、顧客のマインドに深く働きかけることによって競合他社と差別化するブランディングは、究極のマーケティング手法と言われており、どの企業にとっても必要なビジネススキルです。
しかしながら、どこか曖昧でわかりづらいものです。そこで「ブランド」をわかりやすく解説しブランド構築の手順や、ファミリー企業の特性が最も顕著に現れるコーポレートブランドについてもお伝えしています。
実務家として、日々誠実かつ精力的に仕事をしながら、それらを講義に反映させていきたいと考えています。

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