地域貢献と企業の永続性について

企業が事業を営む上で、地域との関係性はとても重要です。

その場合の地域の定義は、その企業の活動範囲によって変わってきますが、地域との関係性無くして、企業は存続できません。

例えば、企業活動を行う上で、その地域の公共インフラや公共サービスを利用し、社員を採用する場合にも、その多くは通勤が可能な地域の住民から採用し、原材料の仕入や商品の物流もその地域の業者に依存するケースが多く、企業は地域との関係無しでは存続はできません。

地域との間に良い関係を築き、共存していくためには、企業も地域に対して何らかの価値提供、すなわち地域貢献を継続的に行っていく必要があります。

企業は自らが事業を行う上で、先に述べたように地域住民を雇用し、地域企業の商品やサービスを消費し、そして自社商品やサービスを生産して地域に提供し、そうした一連の事業活動の結果である利益から税金を納めるという貢献を常に行っており、ことさら地域貢献を積極的に行う必要性は無いようにも思えます。

一方で、長寿企業の事例を見てみると、積極的に地域貢献に取り組んでいることが分かります。

私が以前調べたことのある「月桂冠」(1637年創業)の事例を挙げると、酒造りにはきれいな水(地下水)・適度な気候が必要であることから、地元の京都伏見とは切っても切れない関係にあります。

事業特性上、常に地域から恩恵を受けている月桂冠は、普段から様々な形で京都伏見の発展に貢献しています。

京都伏見の酒造り文化を守るために、日本酒の博物館である「月桂冠大倉記念館」を開設して、伏見を訪れる人達に日本酒の魅力を伝えたり、あえて昔の建物を残して伏見の古い街並みを保存したりして、京都伏見の魅力向上に貢献しています。

それ以外にも、社長自らが多くの公職に就いて地域を支え、社員も清掃活動に定期的に参加し、積極的に地域貢献活動を行っています。

一方で、月桂冠が危機に瀕した際に、地域の人々の支えによって乗り越えたという時代もありました。

このような長寿企業の例を見てみても、企業と地域が共存する好循環のエコシステムを構築・維持していくことは、企業が永続していく上で不可欠な要素であるのではないかと考えられます。

それでは、企業による地域貢献活動が、永続性に対してどのような具体的効果をもたらしているかについて、更に考えてみたいと思います。

第一に、地域における企業ブランド向上です。

よく地域の祭りやイベントに企業が協賛しているケースがあるかと思いますが、そうした協賛活動は地味ではありますが、地域住民の企業に対する信頼が高まります。

なぜならば、祭りやイベントの運営者自身が地域住民であり、そうした自分達の活動を企業が陰で支えてくれているということを実感するからです。

企業に対する信頼が高まることは、すなわち企業のブランド向上を意味し、結果として顧客ロイヤリティの向上や、優秀な人材の採用に繋がります。

そうした企業ブランドの向上は一朝一夕では為し得ず、好不況に左右されない継続的な貢献が必要となります。

第二に、社員の意識向上やチームワーク形成です。地域貢献の一環として、社員自らが清掃活動を行ったり、福祉施設を訪問して奉仕活動を行ったりするケースがあります。

こうしたボランティア活動を通じて、地域住民から直接「ありがとう」という感謝の言葉をもらうことで、社員のモチベーションは高まります。

また、活動を通じて違う部門の社員間でコミュニケーションが生まれ、結果として部門間の垣根が低くなり、仕事をする上でのチームワークが良くなったりする効果があると考えられます。

第三に、地域の目によるガバナンス効果です。継続的な地域貢献を通じて、企業の認知が進むと、その企業の経営者や社員も徐々に地域に認知されるようになり、どこにいっても〇〇の社長さん・社員さんと言われるようになります。

そうすると、経営者や社員はその地域で、期待に背くような行動はできなくなります。

特に地方では地域社会が狭いため、悪い噂はすぐに広まってしまいます。こうした地域の目はある意味「うっとうしいもの」ではありますが、一方で企業に対するガバナンス効果を生み、経営者や社員の中に「自らを律しなければならない」という規律や倫理観を形成していきます。

こうした地域の目によるガバナンス効果は、企業が永続する上で、経営者の暴走や社員の不正を防止する役割を果たすと考えられます。

また結果として、経営者や社員はあまり派手なことができなくなるため、質素倹約の社風を生むと考えられます。

実際、長寿企業のファミリーの家訓に「質素倹約」の言葉が多いのも、こうした背景があるのではないでしょうか。

このように、継続的な地域貢献は、企業が永続する上で様々な効果をもたらすと考えられますが、こうした考えは、企業が地域を離れて海外に進出する際にも役立ちます。

近年、製造業において生産拠点を海外に移転したりするケースが増えてきていますが、その進出先において、このようなエコシステムを構築できるかが、海外進出成功のカギとなると言えます。

すなわち、日本流のやり方を現地に押し付けるのではなく、現地のコミュニティの多様性に合わせ、企業が継続的な地域貢献を行うことで、地域の協力が得られるようになり、その結果、好循環なエコシステムを構築することができるのです。

進出先の地域に受け入れられなければ、その企業は進出先に根を張ることはできないため、こうした地域貢献によるエコシステムの構築の観点は重要であると言えます。

また近年、企業が地方を離れ、都市部に集中するようになってきていますが、こうした考え方を応用することができると考えられます。

都市部にある企業であっても様々なコミュニティ(業界団体・商工会・SNSなど)に必ず属しており、そのコミュニティの特性に合った互恵関係のエコシステムを構築し、貢献し続けることで、先に述べたような効果を得ることができ、企業の永続性を高めることに繋がるでしょう。

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