FBAAフェスタ2025 ― ファミリービジネス2.0 家業の「シンカ」を関西から ― 開催報告
FBAAフェスタ2025
― ファミリービジネス2.0 家業の「シンカ」を関西から ―開催報告

開会・趣旨共有
総合司会 フェロー 株式会社オレンジフリー 代表取締役社長 蒲原くみ

実行委員会事務局長 フェロー 野村早希

実行委員長・FBAA執行役員 末松大幸
今日はファミリービジネスのお祭りです
関西フェスタの開幕にあたり、実行委員長の末松大幸氏は、全国各地からの参加に感謝を述べた。岩手県や沖縄をはじめ、全国から多くの参加者が大阪に集ったことに触れ、「今日はファミリービジネスのお祭りです。ぜひリラックスして楽しんでほしい」と呼びかけた。
開催地を大阪とした理由については、「出発点が大阪であればいいという思いがあった」と語り、商人の町・関西に根づくベンチャー精神や地域愛を紹介。サントリー創業者・鳥井信治郎氏や阪急電鉄を率いた小林一三氏といった経営者の姿を通じて、関西らしい経営者像を示した。
前夜祭でも触れた「おきあがりこぼし」を例に挙げながら、「何度転んでも立ち上がる存在になってほしい」と後継者への願いを語り、参加者同士の交流の大切さにも言及。「家族のことを考えながら、この一日を存分に楽しんでほしい」とメッセージを送り、フェスタの幕が開いた。

日本ファミリービジネスアドバイザー協会 プレジデント 小林博之
ファミリービジネスを皆で考える時間
続いて登壇した小林博之氏は、本フェスタを「ファミリービジネスを皆で考える時間」と位置づけ、その趣旨を共有した。今回は会員に限らず一般参加者も迎えていることから、日本ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)の概要と、活動に込めた思いが紹介された。
2012年に設立されたFBAAは、ファミリービジネスが「同族経営」として一面的に捉えられがちだった時代から、その本来の強さや誇りに着目し、永続的な発展を支えるアドバイザーの育成を続けてきた。専門性だけでなく、人としての在り方や倫理観を重視する姿勢が、協会の根幹にあるという。
今回のフェスタは4回目の開催であり、初めて東京を離れて大阪で実施された。「ファミリービジネス2.0 家業のシンカを関西から」。
「真価」「深化」「進化」という三つの「シンカ」を軸に、参加者とともに考えを深めていきたいと語った。

セッション1|真価
ファミリービジネスの本質を見つめ直す
ファウンダー・名誉理事 西川盛朗
すべてのファミリービジネスは、家業から始まる
西川盛朗氏の講演は、「すべてのファミリービジネスは、家業から始まる」という静かな一文から始まった。
どれほど世界的な企業であっても、その原点は小さな家業だった。続いてきた企業には必ず理由があり、その理由を問い直すことこそが、いま求められているのだと語る。
関西は、商人の都として信用と信頼を基盤に経済を築いてきた土地であり、短期的な利益ではなく「続けること」「託すこと」を前提とした営みが根づいてきた。だからこそ、この地でファミリービジネスの真価を考える意味があるという。
ファミリービジネスは、「ビジネス」「オーナー」「ファミリー」という三つの円が重なる構造を持つ。この重なりは複雑さではなく、長期的視野、迅速な意思決定、価値観の継承、地域との結びつきといった相乗効果を生む強みである。
西川氏は、ファミリービジネスの真価を、長期的視野、理念の継承、信頼関係、柔軟な意思決定、社会的責任といった要素に集約し、最後に「あえて、しないことを選ぶ」という視点を加えた。それは、時間軸の長い経営ができるファミリービジネスだからこそ可能な選択であると語られた。

事例登壇 橋本明元様 (株式会社王宮/ブリッジホテルグループ 専務取締役)
誠実とは、目先の損得で動かないこと
橋本明元氏は、成功事例ではなく、「家業を継ぐことへの葛藤」を率直に語った。
株式会社王宮の原点は、「腹いっぱい豚肉を食べたい」という創業者の願いにある。他人と同じことをせず、人が喜ぶことを考え続けてきた姿勢は、現在の経営にも脈々と受け継がれている。
一方で橋本氏自身は、家業から逃げ続けた時期があった。名前への劣等感、家業との距離、そして挫折。転機となったのは、創業者の故郷を訪れた経験だった。「この会社を潰してはいけない」という想いが、家業と向き合う覚悟を生んだ。
橋本氏が繰り返し語ったのは、「誠実とは、目先の損得で動かないこと」という言葉である。コロナ禍で売上がゼロになっても社員を一人も切らなかった判断は、覚悟と誠実さの象徴だった。

セッション1| まとめ
太成学院大学経営学部准教授 福地真一
福地真一氏は、西川氏と橋本氏の講演を受け、ファミリービジネスの原点にある「価値観」と「関係性」に光を当てた。
日常の中で語られてきた言葉や、家族の中で共有されてきた記憶が、企業の判断軸となる。その見えない資産を言葉にし、見える形にすることが、アドバイザーの重要な役割であると語った。
支援とは答えを与えることではなく、寄り添い、ともに考え、歩くこと。
ファミリービジネスの真価は、人と人との関係性の中にあることが改めて示された。

【特別シークレット企画】FBAAシン喜劇
笑って、ズッコケて、気づけば自分ごと
午後のシークレット企画として披露されたのは、日本初となるファミリービジネスを題材にした喜劇「FBAAシン喜劇」。
吉本新喜劇のテーマとともに幕を開けた舞台は、爆笑の連続でありながら、事業承継の本質を鋭く突いた内容だった。
「事業承継で大切なのは、『引き継ぐ』ことではなく『託す』こと」
「相談役」か、「支配役」か。
ズッコケながらも突き刺さる言葉に、観客は次第に“当事者”として舞台を見つめていった。
最後は大阪締めで会場が一体となり、笑いと学びが深く心に残る時間となった。
出演:FBAAフェロー 森原英壽(座長)、武井芳三、本田 光、野村早希、辻田洋一、藤原健一、矢頭聖子

セッション2|深化
家族関係と仕組みが、家業を支える
日本ファミリービジネスアドバイザー協会 理事長 武井一喜
ファミリーのハートを温めることが、永続の力になる
武井一喜氏は、ファミリービジネスにおける「家族関係」と「仕組み」の重要性について語った。
「会社は元気でも、家族は元気とは限らない」。
世代を越えて蓄積された小さな行き違いが、やがて大きな経営リスクとして表面化する現実を示し、家族の対話を意識的に仕組み化する必要性を強調した。
三円モデルをもとに、ファミリー・ガバナンスとは何かを解説し、家族のハートを温める営みこそが、ビジネスの永続につながると結んだ。

事例登壇
株式会社バーテック 代表取締役社長 末松仁彦
三世代で紡ぐ、幸せの連鎖
末松仁彦氏は、三代目経営者として向き合ってきた葛藤と実践を率直に語った。
株式会社バーテックは、創業以来、工業用ブラシの専門メーカーとしてモノづくりの現場における「掃く、磨く、運ぶ、隙間を塞ぐ」といった課題を解決している企業です。
特に、高い「働きがい」と「全員参加型経営」で知られ、近年、働きやすい企業としても高い評価を受けているファミリー企業です。高い専門性と確固たる経営理念(フィロソフィ)により、安定した事業成長と、社員が生き生きと働く職場環境の双方を追求しています。
親子の対話を仕組みとして継続してきたこと、家族と社員を切り離さずに考えてきたこと。
その積み重ねが、企業の土台を強くしてきたという。
ファミリービジネスの価値は、家族だけのものではなく、社員や社会へと広がっていく。
「幸せの連鎖」は、意志と仕組みによって紡がれるものであることが示された。

セッション2 まとめ
税理士 本田 光 オクトー(OCTO)税理士事務所代表
本田光氏は、ファミリービジネスを深化させる鍵は「関係性」にあると語った。
制度や数字の前に、まず、ファミリーの関係性を整えること。家族会議や対話の場を意図的につくり、共通言語を育てていくことが、未来への推進力になる。
ファミリービジネス支援とは、関係性から始まる営みであることが、改めて示された。

セッション3|進化
家業だからこそ、変えられる未来
パネルディスカッション
ファミリービジネス2.0 進化の方向性

▶︎モデレーター
FBAA執行役員 丸山祥子
▶︎スピーカー
株式会社手原産業倉庫 代表取締役 今井あかり氏
協和運送株式会社 代表取締役 山本基成氏
豊開発株式会社 代表取締役 清水 勇輝氏
後継者として経営に向き合う3名のスピーカーによるパネルディスカッションでは、承継の現場で直面する課題と工夫が語られた。
「入社して最初に直面した課題をどのように乗り越えたのか?」
「経営のスタイルとして先代から承継したことは何か?意識して変えたことは何か?」
「事業と個人・家族の関係について考えること。家族経営の難しさや支え合いの工夫はどうしているのか?」
それぞれの体験談から、それぞれ険しい道をあゆみながらも絶え間なく試行錯誤をしていることや、家族や社員との支え合いが大切であることが語られた。
セッション3 総括
プレジデント 小林博之
小林氏は、ファミリービジネスの進化を「ビジネス」「ファミリー」「オーナーシップ」という三つの視点から総括した。
DXやAIの活用が前提となる時代においても、変わらないのは人への理解と敬意である。
進化させるべきものは進化させ、守るべき本質は守り続ける。その姿勢こそが、ファミリービジネスとアドバイザーに求められていると語った。
▶︎FBAAフェスタ2025
実行委員会
理事・プレジデント 小林博之
実行委員長 末松大幸
実行委員会事務局長 野村早希
総合司会 蒲原くみ
北口拓也
北島誠士
末松仁彦
武井芳三
多田友彦
玉林直人
辻田洋一
野村早希
福地真一
藤原健一
本田 光
森原英壽
矢頭聖子
山道紀子
山本基成
吉田ともこ
(五十音順)