第70回定例セミナーレポート
「PEファンドによるファミリービジネスに対する価値貢献」

FBAA第70回定例セミナー

1.  概要

70回目となる今回の定例セミナーは、スウェーデン本拠のプライベートエクイティ(以下PE)ファンドの日本法人、EQTパートナーズジャパン株式会社 Partner, Private Capital Asia Teamの鬼塚哲郎氏をお迎えし、PEファンドがファミリー企業への投資を通じ、どのように創業家や経営陣に寄り添い、投資後のサポートをしているのか、お話を伺いました。

なお、今回のセミナーは会場、オンラインのハイブリットで開催しましたが、質疑応答の時間には会場、オンライン双方の参加者から多くの質問を頂き、活発な質疑応答が行われました。

2. EQTパートナーズについて

冒頭、鬼塚様よりEQTパートナーズのご紹介を頂きました。EQTパートナーズの特徴として、スウェーデンのウォレンバーグ家を起源としていること、「企業を”Future-proof”し、世の中にポジティブなインパクトをもたらす」というパーパスを重要視していること、といった、他のPEファンドにはない、ユニークな点をご説明頂きました。

3. PEファンドビジネスの概要、ファミリーがファンドと接する際の留意点について

PEファンドの概要についてご説明を頂く中で、ファミリーがPEファンドと接する際の留意点についてお話を頂きました。ファンドは時間限定で投資家の資金を預かって運用しているという業の性格上、投資先への投資期間が3年から7年と限定されるため、投資を受け入れるファミリーにとっては、有限の時間を活用して何ができるか、という点を確認することが重要、とのご説明を頂きました。

4.  PEファンドが出資する非上場企業と上場企業との比較

PEファンドが出資する非上場企業と上場企業との比較を、①資金調達、②株主構成、③非連続な成長施策、④必要な経営人材の追加、という4つの視点からご説明を頂きました。ファンドが出資する非上場企業は、①資金調達については、PEファンドから求められるリターンは高く資本コストは高いものの機動的な資金調達ができる点、②株主構成については、株主が少数であるため迅速な意思決定ができる一方で、PEファンドとファミリーとの間で思想が合うことが重要である点、③非連続な成長施策については、大胆な非連続な成長施策を実行しやすい点、④必要な経営人材の追加については、PEファンドが持つネットワークを活用してトップ人材を獲得しやすい点、をご説明頂きました。

5. ファンドのリターンの出し方

ファンドがどのようにリターンを出しているのか、という点について、これはファンドごとに違うものの、EQTパートナーズは、冒頭にご説明頂いたFuture-proof、持続的な成長というパーパスを重要視していることから、成長支援でリターンを上げる、とのご説明を頂きました。
この点について、過去のリターンをどのように出したのかをファンドに聞くことは、ファンドからの出資の受け入れを検討するファミリーにとって重要である、とのお話も頂きました。

6. 投資後のガバナンスについて

PEファンドが投資先に取締役を派遣することは一般的で、中にはファンドの担当者で取締役会の過半を占めることもある一方で、EQTパートナーズは、取締役会に会社にとって必要な人を入れることができるよう、同社からは1名のみ派遣をし、あとは指名権を取り必要な人材を社外人材から選定している、とのことでした。

7. 投資先のケーススタディ

EQTパートナーズの投資先のうち、ファミリー企業の2社、ベネッセホールディングスとフジテックの事例をケーススタディとしてご説明頂きました。

(ベネッセホールディングス)
ベネッセホールディングスがPEファンドを使い非上場化をする判断をしたのは、特に成長戦略の見直しが必要な教育事業の領域で非連続な成長施策を実行するため、迅速に意思決定をできるようにしたい、との考えからであるとのご説明を頂きました。

創業家が非上場化をする際のパートナーとしてEQTパートナーズを選定した理由は、慈善活動への理解、同じフィロソフィーを持っていること、ベネッセホールディングスの主要事業である教育と介護の領域で実績があること、の2点であったとのお話がありました。

また、出資後は、教育と介護の両領域で、様々な施策をスピーディーに意思決定をし、実行している、とのことでした。

(フジテック)
エレベーター等の開発・製造・販売・保守を行うフジテックは、長年アクティビストと創業家が対立し、それが同社の経営に影響していていました。非上場化を通じてEQTパートナーズがアクティビストファンドとの対立を解消し、安定株主であるEQTパートナーズの支援の下、ガバナンスの強化と成長戦略の実行に注力し中長期的な成長を目指す、という事案でした。

複数の買い手候補の中からEQTパートナーズが選定されましたが、選定された理由として、非上場化以前より長年にわたりコミュニケーションを取ることで信頼関係を構築できていたこと、業界の知見を持つEQTパートナーズのグローバルネットワークや社内リソースを活用して中期経営計画の実行を支援できるとの確信を創業家と経営陣が持ったこと、を挙げられていました。

8.本セミナーでの学び

ファミリー企業がPEファンドを活用する際、各ファンドの特徴をどのように見極めるか、出資後にPEファンドが投資先とどのように関わっていくか、どのくらいの時間軸でファンドと関わっていくか、といった点について、ケーススタディと合わせて理解することができました。
PEファンドによる非上場化の案件は最近増加傾向にありますが、今後、ファミリー企業が永続化のための1つの選択肢としてPEファンドの活用を検討する際に、非常に役に立つお話でした。

寄稿:FBAAフェロー 内田博之
FBAAフェロー5期生
2024年5月まで、上場ファミリー企業において、買収、提携等の事業開発業務の責任者を務めると共に、一族の資産管理業務を担当
公認会計士・税理士、FFI Certificate in Family Wealth Advising資格保有者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト

 

参加者の声

PEファンドはMBAの頭でっかち達が生産性ばかりに注力しがちですが、このEQTは売上増加に貢献しているので評価できます。
(FBAAフェロー 山口公明)
PEファンドは、普段新聞やニュースで見聞きするぐらいでしたので、現場の方のお話しをリアルにお聞きできたのはとても貴重な体験でした。
講師については、柔らかい話し方の奥にある厳しさを感じ、高い人間力、知性、品格、冷静な判断力、物事の本質を見極める目 等、かなり高度な力を求めるられる仕事だと感じました。
(FBAA会員 坪山 了)
PEファンドの役割とファミリービジネスへの価値貢献について、具体的で非常に分かりやすいご講演をいただき、誠にありがとうございました。
特に、以下の点について大きな学びを得ることができました。
1.PEファンドの新たな役割の理解
PEファンドというと、短期的な利益を追求するイメージを漠然と持っていましたが、EQT様のように3〜7年という中長期的な視点で企業に深く関与し、事業の持続的成長を共に目指す「パートナー」としての役割があることを知り、認識を新たにしました。
2.「パーパス・ドリブン」な投資哲学の重要性
ウォーレンバーグ家というファミリービジネスを起源に持つEQT様だからこその、「世の中にポジティブなインパクトをもたらす」という明確なパーパスが、投資判断や価値創造の根幹にあるというお話に大変感銘を受けました。これは、多くのファミリービジネスが大切にしている理念や価値観と通じるものだと感じます。
3.ファミリービジネスにとっての選択肢
上場とPEファンドとの協業を比較し、それぞれのメリット・デメリットを整理していただいたことで、特に「非連続的な成長」を目指す企業にとって、PEファンドが極めて有効な選択肢となりうることが明確に理解できました。ベネッセ様や富士通様の事例は、その具体的なイメージを掴む上で大変参考になりました。
貴重なお話をありがとうございました。
(FBAAフェロー 小島健嗣)
詳細な内容をありがとうございました。EQTさんの長期目線での取り組みがとても勉強になりました。重ねてありがとうございました。
(FBAAフェロー 富塚祐子)
PEの目的や実務も事が良くわかった。PEと言う強欲で、あまりイメージが良くなかったのですが、ちゃんとしているところもあるのだなと思った。
(FBAAフェロー 長田有司)
EQTグループの投資理念・スタンスが大変分かりやすく理解できました。ありがとうございました。
(FBAAフェロー 仙田博明)
示唆に富んだお話を有難うございました。
(FBAA会員)
自身の周りにもPEファンド、非上場化の提案を受けているオーナーがいるので、リアルに参考になりました。ありがとうございました。
(FBAAフェロー)
業種はよく絞るというところが響きました。また理念を一番大事にされているところが、トップの理由であるという部分も印象的でした。 一方で、お客様層は、ファミリービジネスだがもう経営から離れているとおっしゃられたところが、現状かもしれませんが少し残念にも思いました。
(FBAAフェロー)
なかなか素人には分かりにくいPEファンドという存在や活動について、具体例で教えていただき、とてもよく理解できました。ありがとうございます。
(FBAAフェロー)
現場のお話を教えていただき、ありがとうございます
(セミナーご参加者様)
ありがとうございます
(セミナーご参加者様)

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