FBAA第61回定例セミナー 開催レポート
「永続を目指すファミリービジネスのためのファミリーガバナンスとアドバイザーの役割」

第61回セミナーレポート

FBAA第61回定例セミナー 開催レポート
「永続を目指すファミリービジネスのためのファミリーガバナンスとアドバイザーの役割」

主な講演内容

日本のファミリービジネスは、長寿企業が世界一多いことで有名です。
一方で、長く続いてきたファミリービジネスでも、後継者難やオーナーファミリー内での意見対立等様々な理由からファミリービジネスとしての形を守りながら継続していくことが困難になりつつあります。

本講演ではファミリービジネス永続のカギとなるファミリーガバナンスの概要について説明すると同時に、それを専門家として支えるファミリービジネスアドバイザーや金融機関の役割についても考察してみたいと思います。

講師プロフィール

大澤 真 様 株式会社フィーモ 代表取締役

大澤真氏写真

  • 1981年 慶應義塾大学経済学部卒業 日本銀行入行
    国際通貨基金出向、金融研究所調査役、ロンドン事務所次長、金融市場局金融市場課長、那覇支店長等を歴任
  • 2006年 プライスウォーターハウスクーパース入社
    パートナーとしてファミリービジネス、事業再生、ヘルスケア、金融等のリーダーを務める
  • 2012年 現職
    富山銀行社外取締役、横河電機社外監査役、ファミリービジネス研究所理事、日本ビジネススクール・経営人財育成機構理事等の公職多数

 

セミナーレポート

株式会社アネゴ企画 上田 雅美(FBAA執行役員)

今回はファミリービジネスのコンサルティングを実施している、株式会社フィーモ 大澤真氏のお話をお聞きいたしました。
ご講演の中でご自身のキャリアのご紹介をいただきつつ、大澤氏がサクセッションについて気づいたこととして『サクセッションは一時的なバトンタッチのことだと思っていた』が特に印象に残りました。
お話の中ではご支援しているファミリー企業の取り組みもご紹介いただきつつ、日本の長寿企業の秘密をこう分析されていました。

  • 日本のの長寿企業はどうして長寿企業になることができたのか?というと、オーナーシップを守ってゆこうという意識がある
  • 継ぐ先がファミリーであることが多い
  • 長寿企業はステイクホルダーキャピタリズム
    (オーナーシップを大事にするということは、周りのステイクホルダーを大事にするということが最大のポイント)がある
  • 信頼を大切にしており、信頼積み重ねてゆくための活動を長期的に実践している

また、ファミリー企業の脆弱性についてもオープンにお話しいただき、理解を深めました。

  • 所有と経営が一致しているので、強大な決定権がある。
    強みにもなるし、それが故に強いリーダーに権限が集中していることが裏目に出てしまう。
  • 所有と経営を分けることは手段であり、オーナーと経営がどのように気持ちを一つにして
    協力して企業の価値を出してゆくのかを考えなくてはいけない
  • 株を一番持っているオーナーであっても周囲に適切な助言ができる人が必要であり、
    トップが経営判断を誤るリスクを考えられているのか?
  • オーナーが物事を決める時、誰かを蔑ろにしていないかどうか?(のちに、大きな問題となることもある)

ファミリービジネスの問題も社会的に話題になっている今、このようなことに早くから取り組んでゆくことこそ企業を守るリスクヘッジになることがわかります。
お話の中で紹介された代表的な活動として、『ファミリーガバナンス』と総称される取り組みをご紹介いただきました。
代表的な活動として

  • 家族憲章の制定
    創業家として遵守する大枠のルールの制定と、活動をしてゆくこと
  • ファミリーオフィスの設置
    ファミリーガバナンスに責任を持った財政基盤を持った執行機関を持ち、創業家としての取り組みを推進してゆくこと

そして、スリーサークルモデルで言うところの事業会社はとしては『コーポレートガバナンス』としてこのような取り組みが必要なのだそうです。

  • 取締役会で意思決定を行なってゆく(独裁にしない)
  • 取締役会には創業家以外の人材を入れる
  • 創業家(ファミリーオフィス)と密に話し合いをしながら連携

このように考えると、長寿企業は一人の力ではなく関与する様々な人たちの協力で成り立っていて、まさにみんなで神輿を担ぎ、次の担い手にバトンを引き渡してゆく活動がしっかりとあることがわかりました。

最後に『Trusted Advisor』に触れてくださいました。
ファミリービジネスの永続性を支援するファミリービジネスアドバイザーにも、次のファミリービジネスアドバイザーに承継してゆくことも大切だという話はとても納得が行くものでした。
オーナーファミリーにも世代があります。それぞれの世代に寄り添った支援をするためには、アドバイザーもチームでサポートし、アドバイザーも世代交代しながら全体として長期的に支援することが『アドバイザーとして信頼される』ことにつながることなのだということは大澤氏が考えるファミリービジネスへの支援とは人と人としての関わりを超えたシステム同士の支援であるということが理解できました。

ご講演終了後も熱心な質問が多く、ファミリービジネスアドバイザーの活動にますます注目が集まってきていることを感じさせました。
大澤真様、熱心なご回答をありがとうございました。

参加者の声

寝たこは起きる 長期視点での永続的な関わり 次の世代に活躍する場を残す(FBAAフェロー 渥美崇史様)
家族憲章やファミリーオフィスの大切さが大変よく分かりました。ありがとうございました。中小企業でも家族憲章を策定する文化がもっと広がっていくいいなと感じております。本日はとても貴重な時間をありがとうございました。
広い海外の情報、仕組の視点とすべてやらず専門家に任せるところは任せるとファシリテートしていく知識、能力が改めて必要だと感じました。ファミリーオフィスについて多く勉強していこうと思いましたので専門知識を学ぶ上でどんな方?どんな書籍で学ぶと良いのか気になりました。本日は貴重な講演ありがとうございました。(FBAA会員 荒川浩明様)
辣腕経営者ほど承継リスクが大きいということですが、とても共感・納得しました。こういった経営者ほど承継にきちんと向き合ってほしいと思いますが、なかなか向き合おうとしないケースが多いと思います。良い方法などありましたら、またお聞かせください。
専門性を高めて、一人で取り組まずチームで取り組むという点も非常に参考になりました。(FBAAフェロー 多田友彦様)
大きくはファミリーガバナンス・ファミリーオフィスに関する理解が深まりました。同時に、様々な示唆をいただけたと感じています。ありがとうございます。(FBAAフェロー 福地真一様)
「ファミリーオフィス」をこのセミナーで初めて知りました。先代社長の引退をどのように促すのかは難しい課題だと思っていますが、ファミリーオフィスを利用して気持ちよく引退していただくのはとても良い方法だと感じました。規模が大きくない企業でも取り入れられるような仕組みも考えていきたいです。
ファミリービジネスについて考える事が多い濃い内容でした。ありがとうございました。
ファミリービジネスで継続していく以上、必ず株式の相続について悩まれることになるので、事前に家族憲章を作り相互に万一に備えておくことの重要性を学びました。
本日はありがとうございました。
確かに事業承継は資金が重要ですね。その貯蓄運用先としてのファミリーオフィスがあって、家族憲章のルールづくりというストーリーは納得感がありました。ただ、税務や法務に関する研究は必要かと思いました。
また、前半部分に後継者についてのお話がありましたが、日本の9割が中小企業でその9割が同族企業とされています。比率からしてもやんちゃな子息がいても不自然ではありません。事例に挙げられた後継者はレアケースです。これから中小企業も大改革が必要な時代に、少しくらい羽目を外す(犯罪はアウトだが)自由な後継者を育み、許す風土が日本には必要なのではないでしょうか。そのための軸をずらさない先代から継承される理念が必要なんですね。(FBAAフェロー 玉林直人様)
ファミリーガバナンス構築の実務的な考え方を学ばせていただきました。オーナーシップを共有することのメリットを解説していただきありがたいです。多くのビジネスファミリーで「家督」の考えが亡霊のように付きまとっていますが、この亡霊を追い払う術をご教示いただきました。ありがとうございました。(FBAAフェロー 武井一喜様)
ファミリービジネスに関わる中でぼんやりと感じていたこと(言語化できていなかったこと)をロジカルに分析、解説いただき、目が覚める思いでした。貴重な機会をありがとうございました。
ファミリーオフィスについての役割や知識が明確になりました。ファミリーの祭り事の費用は、誰が出すのか。どう捻出してくるのかを考えておりました。経営指導料としての業務委託契約をして収入を得ていく等、一つ賢くなりました。有難うございました。(FBAAフェロー 末松大幸様)
ありがとうございました。(新岡優子様)
ファミリーオフィスの活用は、これからますます需要が増えると思います。小規模企業向けにもアレンジした手法が使えるといいと思っています。ありがとうございました。(入江和夫様)
実例を含めた分かりやすいご説明講義でした。家族経営・事業承継の実務面、コンサルタント業務面の両面で参加となる考え方でした。
ファミリーオフィスをつくることやアドバイザーの役割等について、勉強させていただきました。中身の濃いお話で、多くの学びがありました。ありがとうございました。
大澤先生のお話、大変勉強になりました。
まさに教科書というべきファミリーガバナンスの基本を確認させていただきました。ご教示ありがとうございました。(FBAAフェロー 桐明幸弘様)
昨日はありがとうございました。
学びになったこと・・・
オーナーファミリーが、「事業を長期にわたりやっていこう」という意志を強く持つことがまず大事である、という部分が改めてその通りだと思いました。
それがあれば、スチュワードシップも腹落ちします。
事業の永続についてイメージできない経営者に対して、考え方を否定せず、どのように接すればいいのか、日々模索しています。
昨今の報道や、誰もが知っている実際の事例とリンクした説明があり、非常にわかりやすかったです。(佐藤英介様)
数十社のアドバイザー、ファミリーオフィス運営をされた経験に裏打ちされたお話が、やはり本物の説得力のあるお話として伺えました。ありがとうございました。

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