『日本的経営を目指して』
~コーポレートガバナンスとファミリーガバナンス~

FBAA第57回定例セミナー 開催レポート
「日本的経営を目指して」
〜コーポレートガバナンスとファミリーガバナンス〜
オタフクHD 代表取締役社長 佐々木茂喜氏

セミナー概要

オタフクソースではファミリービジネスとして起業した会社が100周年の節目を超え、200周年への歩みを確実なものとするために、13年から「家族憲章」の制定に取り組んでいます。

今回はその取り組みにリーダーシップを発揮した佐々木氏にお話をいただき、スリーサークルモデルを経営としてどのように取り組んでいるのかの実践的なお話をしていただきました。

当日は現地(広島)にて社内見学に参加させていただいてからの受講者と、オンラインでセミナーに参加する受講者と、二手に分かれたハイブリッド型での開催となりました。

講演概要(講師より)

大正 11 年に祖父の佐々木清一と祖母のハヤが「佐々木商店」を始めてから今年 100 周年を迎えます。『因縁因果と孫子3世代先のことを考えろ』が、祖父の口癖でした。いまのオタフクソースがあるのは、 創業者が私たち孫世代のことまで考えてくれていたおかげです。

今度は、私たちの世代が、これから3世代先のことを考えて行動を起こさなければならないと悟り、2013年に「佐々木家家族憲章」を制定し「ファミリーオフィス 」を創立しました。

ファミリービジネスの長所を活かしながら、かつ潜むリスクを回避して、社会的信頼のベースになると同時に、 社員からの信頼と満足度向上にも繋げていきたいと考えています 。

参加者の声
〜友鉄工業株式会社 取締役会長 友廣和典様 FBAAフェロー2期〜

今回のセミナーでは、製造工場、歴史館の見学。そして佐々木社長の講話をお聞きし、創業100年経った今でも、創業者の原点である「利他の心」「思いやり」を経営の基礎基盤としながら、時代が変わっても、その旗印の下、ファミリーの結束を、とても大事にしてこられたことが、伝わってきました。

さらに次世代のファミリーにバトンタッチすることも考え、「転ばぬ先の杖」との思いで、数年前に家族憲章も作られ、ファミリーガバナンスが一段と磨かれていて、素晴らしい実践事例としてとても感銘を受けました。

ビジネスにおいては、人材育成に力を入れ、知識偏重でなく、人間性、人としての感性、ひいてはひとりの日本人としてという視点で、社員も家族の一員と言えるような人への育成投資を惜しみなく実践され、ビジネス面での成長発展を支えていることも、大いに学ばせていただきました。
何より現地で、現場の経営の一端に触れながらファミリービジネスについて学びの機会を頂いたこと、本当に有意義で、価値ある時間で、企画された関係者の皆様に感謝いたします。

オタフクソース社では、スリーサークルのオーナーシップも含めて高度に成長された企業に出会えて、貴重な機会をいただくことができました。加えて、FBAAの皆さまと交流できたことにも感謝申し上げます。今回のセミナーはもちろんファミリービジネスの知見を糧に、家族、社員、顧客との絆を深め、物心両面の幸せを追及し、永続的に地域社会に愛される企業の追及に努めてまいりたいと思います。

参加者の声
〜株式会社富士電機製作所 代表取締役社長 堀井智史様 FBAAフェロー9期〜

以下、セミナーのポイントで印象に残ったことをご紹介いたします。

ファミリービジネスが目指すべき、お手本となる企業

  • F/B/Oのスリーサークルが高度にバランスされた組織
  • 親族ならではのネガティブな局面もひたすら向き合い、乗り越えてきた佐々木ファミリーの結束心
  • 非財務的指標を評価しながら、4方良しで絆を大切にした経営
  • 微増で確実な右肩上がり業績の安定型企業
  • 長期的視点での意思決定や、血縁偏重ではない企業体質、ファミリー憲章の制定等

日本的要素6つを企業文化に重用

同社には欧米の合理化された文化だけでなく、日本古来の文化が溶け込んでいた。

  • 豊かな事前に育まれた感性・感覚(創造力)
  • 思いやりや おもてなしの気質(利他の精神)
  • 生活に根付いた文化・風習
  • 自然や神仏に対する畏怖心や信仰心(自浄の精神)
  • 義利人情
  • 海外からの文化の取り入れ

工場見学、お好み焼き会館訪問

工場見学、お好み焼き実習においては、お多福ソースの魅力を多方面から体験した。戦後の焼け野原からの復興とともに進化・発展してきた歴史の中で、後発のソースながらも、顧客のニーズを引出し、製品化されてきたことが同社の成功と発展に繋がっている。1階には、寄贈されたお多福ソースの手芸が大切飾られていた。

お好み焼き開業店向けの研修設備では、安心して開業支援を受けられる。昭和30年代のお好み焼き店を再現したスペースはリアリティが溢れていた。

お好み焼き調理実習では、スタッフの方の目配り、気配りで安心して美味しいお好み焼きを堪能。終日佐々木社長にご同行いただき、お人柄の良さを感じることができた。社員の皆様から心温まるおもてなしからも、心底オタフクソースのファンとなった。わずか数時間の滞在では本当の企業風土は計り知れないが、会社・取引先・地域が共に協力・成長できる文化を感じた。

同社が考える日本的経営

数字で表せる財務的要素だけではなく、非財務的業績(社会貢献、社員満足度)や、地域社会と社員への属性意識も大切にされている。例えば、30年以上継続される家族を招いての入社式、新入社員の家族への手紙は感動を呼ぶ。社員の家族も参加するファミリーBBQ大会、勤労感謝の日には日頃の労をねぎらい表彰大会。過去には無人島サバイバル2泊3日ツアー、唯一無二の体験と強い結束力を育んだ。また、エンゼルプランによる出産など各種手当や、社内に開設した託児所では出生率2.0に到達。

同社の商品ラインアップは高収益率商品だけを取り扱った方が採算は良いように見えるが、少子化の時代に乳幼児向けのアレルギーに配慮したソースを開発し、ニッチではあるが全国のベビー用品店で取り扱われるようになった。

このようなSocial capital(社会的資産)の意義を取り入れたことで、企業価値(必要性)は一層高まっている。
佐々木家で代々承継された、お多福の精神と遊び心から生まれる創造は巡りめぐって地域社会の貢献にも繋がっていた。

「ワシがここまでやったのだから、後はちゃんとせいよ、ではなく、ワシはここまでしかできんかったが、後は頼んだよ。」事業承継であっても、後世にお多福のたすきが受け継がれている。

Top