未曾有の環境変化と事業承継 ~ファミリービジネス白書2022年度版からの示唆~

未曾有の環境変化と事業承継
~ファミリービジネス白書2022年度版からの示唆~
開催レポート

セミナー概要

日本では創業100年を超える長寿企業が極めて多く全世界の約35%を占めるほどであり、その多数がファミリービジネスです。近年海外でのファミリービジネスは地域経済への貢献などに誇りや自覚を持って運営されているため、日本人が驚くほど高い評価がなされており、中国やASEAN諸国から日本へ、その経営戦略や事業承継を学びに来るほどになりました。

「ファミリービジネス白書」は、出版を通じて上場しているファミリービジネスの経営分析や、ファミリービジネスのガバナンスの研究を行っています。2015年、2018年、そして、2022年と今年で3シリーズ目を迎えました。

講師より

本講演では、先月刊行された「ファミリービジネス白書2022年度版」の内容に基づき、環境変化を乗り越える事業承継のあり方について皆様と考えていきたいと思います。

最初に、直近の上場企業におけるファミリービジネス比率、各業種別動向など(第1章・第2章)についてお話します。トヨタのように創業家の持株比率が低いにもかかわらず、なぜ経営者を輩出できるのかというメカニズムについて考えたいと思います。

次に、コロナ禍の未曾有の環境変化にあっても力強く生き抜く老舗ファミリービジネスの事例(第3章)をお話します。特に、地域社会に深く根差す経営が、なぜ長寿に繋がりやすいのかについて考察してみたいと思います。

最後に、ファミリービジネスとして健全に存続するために伴走型事業承継のモデルについて考えてみたいと思います。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

講演参考文献

最新図書「ファミリービジネス白書【2022年版】: 未曾有の環境変化と危機突破力

参加者の声

  • 上場企業での株式の支配はしていないが、役員になれるプロセスのお話は勉強になりました。
  • 私は実務家ですが、研究者の視点は非常に参考になります。
  • プロセスとしての承継は老企業では自然とできているのかもしれないが、戦後創業した企業(事業承継が初めてのファミリービジネス)ではまだまだ不足していてそこにアドバイザーの意義があるのではないかと考えました。
  • 大枠や仮説はわかりやすかった。自分にとっては具体的に実務にどのように落とし込むのかが課題と思った。縁を大切にして,丁寧につなぐという視点を持ちたいと思いました。
  • 日頃様々な地方非上場ファミリービジネスと接している中で、老舗のファミリービジネスがなぜ歴史を重ねて来られたのか、今後の存続の要件は何かといったことを考えています。タテヨコの繋がり(関係性資産)という観点はぼんやりと自身の仮説にもありましたが、ご説明を伺ってクリアになりました。
  • 百年企業がなぜ永続性が高いのかを読み解くうえで示唆に富む内容でした。
  • オーナー経営者という立場ですが、 客観的にファミリービジネスを考える貴重な時間になりました。コロナ対応を社史に残し、次世代に繋いでいきたいと思いました。
  • FB白書だけでは、「その内容をどのように実務に役立てていくのか」について具体的なイメージを描くことが難しかったが、事例を含めたお話をお聞きできたことでイメージが見えてきたように思う。
  • 本日のセミナーは、大変興味深いお話しで大変ありがとうございました。落合先生のお話で、信用や貢献といった関係資産を、中小企業でなく、上場企業が行うという点で、FB企業の上場会社こそ、SGD’sという点で、まさにフロントランナーとしての役割ができるのではないかと感じました。
  • 金融機関でウェルスマネジメント業務に従事しており、企業オーナー様と話していると自社株の保有比率をどのようにコントロールすべきか質問されることも多いです。その中で、創業家の持ち株比率の低いトヨタはなぜ創業家から社長を輩出できるのかという疑問を以前から持っていたので落合先生の講演は大変興味深く感じました。

主催者より

ご登壇いただいた落合康裕先生は、日本のファミリービジネス研究をリードされている研究者であり、FBAA顧問の後藤俊夫先生とともに、「ファミリービジネス白書」の企画編集を指導されました。編集委員には複数のFBAAのフェローも参加しています。

落合先生には、今回は2回目のFBAAでのご講演で、前回は2016年に、「ファミリービジネス白書2015」(最初のファミリービジネス白書)を題材にお話しいただきました。

ファミリービジネス白書は、日本の東証一部から地方市場までの上場企業3,749社の一社一社を、ファミリービジネス/非ファミリービジネスに区分し、さらにファミリービジネスをA/B/Cの3区分に分け、それぞれの業績を長期的に比較しようとする試みです。

A区分は創業家が株、経営の両面で関与する、オーナー経営と呼べるタイプ、
B区分は株式の関与のみで役員としての関与が無いタイプ、
C区分は株式の関与が無く、役員としてのみ関与しているタイプです。

今回の調査で、我が国の上場企業の49.3%がファミリービジネスであり、その業績は非ファミリービジネスを上回ることが、過去2回の調査と同様に明らかになっています。さらに今回はトヨタ自動車に代表される、C区分が、株式の影響力がないにもかかわらず、創業家の出身者がなぜ経営者になる正統性があるのか? について、考察され、セミナーで落合先生から丁寧な解説をいただきました。

また、社会情緒資産(SEW)、レガシー、世代間・地域・ステークホルダーとのつながりなど、ファミリービジネスの最新の研究テーマについても、具体的な事例を交えて共有していただきました。

実務の世界で仕事をするファミリービジネスアドバイザーにとって、これらの研究者の学術的な知見は、クライアントを支援するための様々な示唆を与えてくれるものです。ファミリービジネスをテーマにした実務家と研究者の意見交換の機会として、今回のセミナーは大変意義深いものになりました。FBAAは、今後とも、このような実務と学術研究の交換の場を大切にしていきたいと思います。
(FBAA理事 武井一喜)

講師プロフィール

落合康裕(おちあい やすひろ)氏

博士(経営学)、事業承継学会常務理事、ファミリービジネス学会常任理事。
大和証券、日本経済大学をへて、2018年より現職。
事業承継について経営学の観点から研究を行う。名古屋商科大学ビジネススクール、早稲田大学ビジネススクールで事業承継講座(ケースメソッド)を担当。
2015年に日本で初めてのファミリービジネスの実証研究書となる『ファミリービジネス白書』を刊行。刊行時より企画編集委員長をつとめる。
著書に『事業承継のジレンマ』『事業承継の経営学』(以上、白桃書房)など多数。

Top