多様な人たちと一緒に未来を描くには

多様な人たちと一緒に未来を描くには
~ファミリービジネスにおける、ビジョンづくりの現場~
開催レポート

セミナー概要

2021年8月9日、FBAA(日本ファミリービジネスアドバイザー協会)定例セミナーがオンラインで開催されました。今回のセミナーは、リーダーシップを育む上で重要な「多様な人たちと一緒に未来を描くには ~ファミリービジネスにおける、ビジョンづくりの現場~」と題して、一般社団法人グラフィックファシリテーション協会の代表理事で、株式会社しごと総合研究所 代表取締役の山田夏子氏にお話しいただきました。 

グラフィックファシリテーションは、話し合いの様子を単に可視化するではなく、話し合いの質そのものを深める手法。会議や話し合いに参加している人の言葉では伝えきれない思いや雰囲気を、絵や線、色を使ってリアルタイムに見える化し、話し合っている当人自らが動き出したくなるよう、そっと後押しする。山田さんは、その「グラフィックファシリテーション」を使って「組織開発」を行う第一人者です。

本セミナーでは、そんな山田さんに、グラフィックファシリテーションが果たす役割とファミリービジネスにおける効果をお話いただき、およそ50名もの参加者が熱心に聴講しました。

「グラフィックを用いて紹介する山田夏子さん」 

 

「答えはみんなで導き出すもの」〜山田夏子さんのお話から〜

はじめに、日本企業が抱える組織的なジレンマや停滞感について山田さんはこのように問題提起をされました。

「高度成長期を経て、平成、令和と懸命に奮闘してきた日本企業や組織では、働く個々人の思いを組織の中で表立って語ることをあまりしてこなかった背景があると思います。常識を打ち破り、変化や変革を起こす力は個人の衝動から生まれてくるものなので、個人が正直に、率直に語ることは組織の進化や発展につながるはず…。ですが、語らない文化が定着している中で、個人が急に本音を語ることは、そう簡単なことではないと感じています」

そうした現状に一石を投じる活動を、グラフィックファシリテーションという手法を使って、山田さんは長年行ってこられました。

山田さんは、グラフィックファシリテーションが果たす役割と、ファミリービジネスにおける効果をこのようにお話されています。

「グラフィックファシリテーションとは、参加者の思いをすくい上げ、全員が納得して合意に至るための手法です。

個人の本音、衝動を喚起させるツールであり、グラフィックを活用しながら、組織のパーパスと個人のパーパスをクリエイティブな手法を使ってつなげる役割を果たしています。

同族経営の場合、創業者のパーパス(目的・存在意義)やビジョンは明確にありますが、次世代がそのパーパスをどう引き継ぐかが重要な課題です。

創業者のパーパスをそのまま引き継ぐことが、必ずしも次世代にとってベストな状態をつくるとは限りません。自分の感情に蓋をして相手のパーパスに寄せようとすると、いずれ無理が出てしまうでしょう。

人のパーパスを円のようにとらえた時、軸をずらすのではなく、軸はそのままに、円を広げる感覚を大事にしてほしいと思います。お互いの円を広げてとらえると、無理やり寄せなくても重なる部分を増やすことができ、お互いにパーパスを共有することができると思います」 

 

参加者の声

山田さんからグラフィックファシリテーションの意義や組織に変化が起きた事例などを聞き、セミナー参加者からはたくさんのチャットが寄せられました。

オンラインセミナーならではの「チャット」の盛り上がりや熱量を、山田さんの育成講座の卒業生である市川万起子さんがその場でグラフィックファシリテーションしてくださいました。

「当日グラフィック-チャットより1枚目」

「当日グラフィック-チャットより2枚目」

「当日グラフィック-チャットより3枚目」

グラフィックファシリテーションby 市川万起子さん

 

セミナー後のアンケートにも、参加者からたくさんの声が寄せられました。

<新しい視点>
・普段気が付かない観点のお話で、とても勉強になりました。
・金融マンは数字的なところに依り過ぎているので、このようなタイプのセミナーは参考になります。
・グラフィックファシリテーションがなぜ、今必要なのかがとてもよくわかりました。

<組織・場作りのヒント>
・若い社員たちと会社を育てて、若い人達が活躍したくなる場の形成に、何が必要かよくわかりました。
・組織を動かすには?という組織の根本的な問題を議論する良い機会となりました。

<実務に活かす>
・自分が今やっている活動を加速するためのツールになると感じました。
・ファシリテーションの限界をグラフィックで突破できることを実感できました。困難な案件をスタートさせようとしている今、勇気と自信を得ることができました。

 

主催者より

今回は、しごと総合研究所の山田夏子さんをお迎えしてセミナーを開催いたしました。

山田さんはファミリービジネスからの相談を受けながら、どのような支援が必要なのかを学ぶためにFBAAでの受講に踏み切りました。

山田さんがファミリービジネスに対して強く伝えているのが、月日をかけて育まれてきたエッセンスを言語化する大切さです。老舗のファミリービジネスでは、目に見えない風土・文化・顧客やサービスに対しての想いがみんなをつなげています。

そのため、ファミリーやそこで働く個人が「大切にしていることは何か」を、腹を割って語り合ったり、それぞれが個として違うからこそ理解しあったりすることで目に見えないものを強くしてゆくことが必要だと熱くお話しくださいました。

その活動の積み重ねが、世代間や立場や役割を超えて、さらにファミリービジネスを強くしてゆくことに繋がってゆきます。

組織の人たちに常に寄り添っている山田さんから、違いを恐れずに乗り越えてゆくヒントが随所に散りばめられた愛情深いセミナーでした。(FBAA執行役員 上田雅美)

 

講師紹介

山田夏子氏

武蔵野美術大学造形学部卒業。大学卒業後、クリエイターの養成学校を運営する株式会社バンタンにて、スクールディレクター、各校館長を歴任。その後、人事部教育責任者として社員・講師教育・人事制度改革に携わる。

2008年に株式会社しごと総合研究所を設立し、グラフィックファシリテーションとシステム・コーチング®を使って、組織開発やビジョン策定、リーダーシップ事業を展開する。これまでに携わった組織は950に上る。また、グラフィックファシテーター養成講座も開催し、2,000人が受講。

2017年4月から2018年3月までNHK総合『週刊ニュース深読み』ではグラフィックファシリテーターとしてレギュラー出演。また、2021年5月にはNHK総合『考えると世界が変わる「みんなパスカる!」』でも、グラフィックファシリテーターとして参加し話題を呼ぶ。FBAAの4期出身。

監訳書『場から未来を描き出す―対話を育む「スクライビング」5つの実践』ケルビー・バード著(英治出版)。

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