後継者による積極的事業承継のススメ

私はファミリービジネスにおける経営承継のご支援を行っています。

事業承継は株式等の「資産の承継」と企業の経営そのものに関わる人材、次世代のビジョンや戦略、事業運営の仕組みづくりといった「経営承継」の大きく2つに分かれ、私どもでは後者をビジネスコンサルタントとしてご支援しています。

今回は、そういった事業承継・経営承継における後継者の姿勢について思うところを書いてみたいと思います。

後継者の育成、資産の承継など、事業承継にまつわる動きは基本的に「現経営者・現オーナー」を主語に語られることが大半です。

資産(株式)の承継等は特に所有者が現オーナーである以上、やむを得ない部分もあると思います。

が、一方でそれに引きずられるように経営の承継についても現オーナーからの指示・意向表示待ちといったケースが多いように感じます。

事業の経営を行うには強いリーダーシップが求められます。また、今後の経営を担うのは「後継者」の側であり、本来はもっと後継者側が主体的に自身で今後の経営について考え、プランを立て、進めるべきだと思います。

特に国内においては、今後需要の基盤である人口が減少し、50年後にはピークの2/3になるといわれています。

特に海外に打って出ることが難しい中小企業においては、「本業を粛々と堅実に行えば良い(長続きする)」というこれまでの長寿の法則が崩れ、市場の変化に如何に対応しながら、存続・成長を考えていかなければならない環境におかれます。

ある意味でこれまでの現オーナーの「経営の法則」が通じない環境において、次期経営者である後継者がどれだけ主体的に準備ができるかというのが会社の存続・成長の大きなカギとなります。

このような動きに対して

「親父(現オーナー)を追い出そうとしているように見える」

「資産(株式等)に対して欲を出しているように見える」

というような考えを持つ方もいらっしゃいます。

「積極的」「主体的に」というのは「すぐ承継せよ」ということではなく、「自ら」事業承継計画をたて、現経営者とコミュニケーションをとり、合意形成をはかりながら、行動するということが重要だということです。

ちなみに、後継者が承継後(社長交代)、いきなり様々な改革を進めるといったケースがありますが、社内の個人的にはあまりおすすめしていません。

基本的には承継後丸1年は既存の経営を踏襲し、幹部・社員との関係構築や課題の抽出につとめるべきだと思います(会社として存続の危機にある場合は別ですが)。

上記環境が整い、やるべきことが明確に見据えた上で徐々に自身の「経営スタイル」にあわせて変えていったほうが社内に無用な混乱を起こさず、スムーズに進みます。

話を後継者の「主体性」に戻します。

実際に私がお手伝いしている会社においても、後継者の姿勢が主体的で「自ら」計画を立て、現経営者と話をしながら、次世代に向けた準備を行っている会社のほうが圧倒的に事業承継は順調に進んでいます。

最初は二の足をふむ後継者の方も多くおられます。が、まず一歩を踏み出し、経営者に意思・思いを伝える、そこから経営者と承継について定期的なコミュニケーションが取れるようになり、自らの自信にもつながって「良いスパイラル」に入ると理想的な形で承継が進んでいきます。

現経営者のほうも最初はいろんな意味で警戒するところもあるようですが、話をしていくと徐々に合意形成がしやすくなり、後継者に対する信頼や「これなら継いでも大丈夫」という安心感が醸成されるように思います。

9月にFBAAでご講演いただいた「後継者ゼミ」の山野先生のお話しもありましたが、ファミリービジネスの存続・成長においては後継者が如何に主体的・前向きな姿勢で承継に取組むか(取組めるようにもっていくか)が非常に重要なポイントだと思います。

私も今後も「後継者」の積極的事業承継を支援していきたいと思います。

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