事例報告「事業承継について」

昨年1月から6ヶ月間(月2日間)東北の会社の事業承継のお手伝いをさせて頂き、その時「気づいた点」「反省点」について述べさせていただきます。

概要

  1.  東北エリアで雑貨・ギフト専門店4店舗を経営
  2. 創業1970年、資本金1000万円(社長:800万円、取締役200万円)売上高13億円
  3. 従業員数:社員50名 パ-ト社員20名
  4. 役員構成:代表取締役社長A氏(71才)、取締役B氏(A氏の妻、64才)2名
  5. 依頼内容

創業社長より早いタイミングで社長職を長男C氏に円滑に譲り、併せて商店的な経営から普通の企業として脱皮させるため、ビジョン・組織、諸規則等を整備してもらいたい。

取組事項

  1. 事業承継の枠組みとスケジュ-ル
  2. 事業の取組方向
  3. 経営課題の抽出と対応策

取組スケジュ-ル及び議題

2015年1月:会社の事業内容、BS、PL、労務構成、人件費、会議体等 現状把握、インタビュ-の実施(社長夫妻、長男の3名)承継時期・ビジョン・会社の強み・弱み

2015年2月:インタビュ-結果報告、経営課題の抽出、事業承継のスケジュ-ル・枠組みの確認

2015年3月:経営課題の確認と対策(ビジョン、経営計画、予算管理制度の変更)

2015年4月:経営課題の確認と対策(組織体制、役割分担、会議体)

2015年5月:経営課題の確認と対策(要員・人件費管理)

2015年6月:経営課題の確認と対策(規則・規定の整備、家族会議の議題と進め方)

結果

  1. 年度替わりの2015年7月1日 社長交代、新社長が1000万円増資(新資本金2000万円)
  2. 全体朝礼でビジョンと3ヵ年計画、新組織を発表
  3. 新しい会議体制(家族会議含む)、新予算管理制度、規則規定等の運用フォロ-

*7月までは運用をフォロ-し仕事を終えた。

反省点と今後の取組課題

(1)その後

今年の4月に上記の会社のその後をヒアリングした所、計画通り行われたのは、

  1. 社長交代
  2. 株式構成の変更
  3. 管理会計制度
  4. 人件費管理

のみという状況で、その他の確認事項は棚上げされているか、元の形に戻っていた。

(2)反省点

  1. 事前に3人に対し個別にインタビュ-と全員でのミ-ティングを行い、事業承継に 関する考え方、会社の課題、将来方向等の共有化を図れたと思っていたが、充分ではなくもっと時間をかけ本心を引き出し各課題を掘り下げる必要があった。この出発点の対応が上記のような結果となった原因の一つだと思われる。
  2. 元々父親と長男は仲が悪く、コミュニケ-ションも殆ど取れておらず取締役である母親が長男寄りではあるが、仲介役を果たしていた。それに甘んじて私も積極的には父親と長男の間に入り込まず各課題に対する対応策を作成する事に重点を置いた。
  3. 短期間で課題が盛りだくさんで対策が若干表層的になった。

(3)今後の取組課題

上記のとおり父親と長男のコミュニケ-ションが悪いのを承知で、課題の対策を優先していった。実は事業承継の当事者同士のコミュニケ-ションが悪いという事が最重要課題であったと思われる。

具体的には、

  1. 親子を仲良くさせる事はできなくとも新会長、新社長として経営理念、会社のありたい姿、事業の方向性、会社の運営等に関する事は意思疎通が図れるような状態を作る。
  2. 新体制における新会長と新社長の役割分担・決裁権限について、もっと時間をかけ双方が十分納得するまで時間をかける。
  3. 取組課題は全体で充分話し合いを重ね、重要課題・優先課題に絞り込む。
  4. インタビュ-、ミ-ティング等は ゆっくり過ぎるくらいのペースで皆が腑に落ちるまでじっくり行う。

等が必要であったと思われます。

以上が私の経験談と反省点ですが、わずかでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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