コーチ型親父のすすめ ~事業承継の成否は親父のコミュニケーション力で決まる!!~

ここでは中小企業の親父経営者として私が事業承継で取り組んできたということと、事業承継コーチとしてクライアント企業の事業承継に関与したという経験から私なりの考えをもつに至りましたので、それを述べることにいたします。

なお私自身もそうですが、私が関与した中小企業は同族企業を営む小規模の会社でした。ご参考になるかわかりませんが、みなさまの少しでもお役に立てれば光栄です。

1、私の事業承継

創業者末松富三郎は創業7年目でなくなりました。父を亡くした私は18歳で工業用ブラシの社長職を引き継ぎました。特にこだわったのは社名です。バーテックのBURRはバリということで「厄介なもの」という意味があります。社会の厄介な問題をブラシで解決するソリューションカンパニーをつくるという志をたて、その思いを社名にいたしました。

承継してあれから40年弱。57歳のとき27歳の長男に社長職を譲り、自分自身はトップコーチングスタジアムという中小企業(同族企業)のリーダー育成をねらいとするコーチングの会社を創業いたしました。私は長年、「本音でフィードバックし、経営者に伴走してくれるようなコーチがいればなあ」と思っていました。それが創業の原点です。

一昨年、FBAAの講座を受講して、同族会社の事業承継に悩みをもつ経営者に対して適切なアドバイスやコーチできるように精進している毎日です。

2、中小企業(同族企業)の事業承継を成功させるための親父の心得

「コーチ型親父をめざせ!」

コーチ型親父とは、後継者ほか、取り巻く関係者の才能を引き出し承認する親父のことです。ばらばらになりがちなファミリーの意見をまとめあげ、ファミリー間の問題を小さい間に解決していくように仕組みやルールをつくりあげます。スタンスとしては存在感のないリーダーとなり見返りを求めず、利他の心で関係性を築く親父です。

なぜ、いまコーチ型親父なのか?

事業承継の成功は、親父のリーダーシップにかかっているからです。とくに親父のコミュニケーション力にかかっています。親父のコミュニケーション力は、同族企業コミュニケーションの基礎となりモデルとなります。事業承継は駅伝レースです。それは確実に一族に伝染していきます。コミュニケーションという基礎の部分がしっかりしていないと永続的な事業承継の成功はないと私は考えています。

創業者が亡くなり、二代目三代目四代目・・・と経過してきますとファミリーの人数は増加してきます。放置しておくと創業者の求心力はなくなりファミリーの結束力は弱くなるばかりです。人数が多くなればなるほど、ファミリーのコミュニケーション力が必要になってきます。

3、コーチ型親父のコミュニケーション4つのテスト

①否定的な言葉を言っていないか?

②上からものを言っていないか?

③話の腰を折ることはなかったか?

④最後まで話を聞くことができたか?

4、タスキを渡すコーチ型親父に求められる9つの行動

  1. 売上や利益より事業継続を経営課題の優先順位のトップに考えること。
  2. できるだけ事業承継時期を早くすること。期日を決めたら変えない。
  3. 出口戦略として親父自ら事業承継後の自分の活躍できる次の舞台を準備すること。
  4. コーチ型親父は後継者に対しては、制限なくして青天井にすること。
  5. いかにタスキをトップスピードで渡すかを考え行動すること。
  6. 後継社長や社員を育ててくれる番頭さんだけを選び会社に残すこと。
  7. コーチ型親父は後継者や社員が世界に通用するプロの経営者・リーダーになるような環境をつくること。
  8. コーチ型親父は周りへの承認とモチベーションをあげることを仕事とすること。
  9. コーチ型親父の限界を感じる場面では、第3者であるファミリーアドバイザーや外部専門家にゆだねること。

5、後継者の育成について

自分の頭で考え、主体的に行動できる後継者をつくることが肝要です。しかし最近、中小企業の経営者のみなさんと接していて気づくことがあります。それをカーリング親父と名づけました。事業承継で相談を受ける親父経営者は、ほとんど、カーリング親父です。

カーリング親父とは、後継者が困難にぶちあたったとき失敗する前に親父が出て来て問題や困難なことを解決してしまう、つまりその都度、親父がほうきやブラシで困難を払いのけてしまう親父たちをいいます。後継者は失敗を体験する権利があるのに、失敗から学ぶ環境を親父が破壊していくカーリング親父が多いのです。

6、親父自ら出口戦略を考える

リーダーは、そもそも自分自身の幕引きのことを考える人は少ないようです。韓流映画の将軍のように将軍の座を譲った後も死ぬまで陰で実権を握っている人が多いのです。日本人の平均寿命が延びて来ているように事業承継時期も大幅に伸びて来ています。親父経営者はゴールの期日を延ばしがちなので、ゴールなきマラソンランナーにならないようにしたいものです。どのように会社からフェードアウトするかを常に考えておくことが大切です。

7、これから私がやりたいこと

同族企業というとマイナスイメージがあります。そのイメージを払しょくさせるような強いファミリービジネスを展開できる会社をクライアントと共に数多く創っていきたいと考えています。そのためには私自身が事業経営者として、コーチ型親父の姿を貫くことが自分の使命だと考えていています。

後継者には、コーチ型親父として取り組んできた私の「生き方」を少しでも参考にしてもらいたいと願っています。幸い、昨年FBAAのⅢ期生として、後継者である長男仁彦も受講させていただきました。FBAAで学んだことを実践活用し、親子で力を合わせて「日本一強いファミリービジネスをつくろう」と考えているところです。

最後になりましたが、日本ファミリビジネスアドバイザー協会の地位向上、認知度向上に向けて、フェローの皆さまとともに盛り上げていきたいと考えています。

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