FBAA第65回定例セミナー 開催レポート
「ファミリービジネスの課題とそのソリューション」

FBAA第65回定例セミナー 開催レポート
「ファミリービジネスの課題とそのソリューション」

主な講演内容

前半において、オーナーの皆様向けに、ファミリービジネスの創業家が遭遇しやすい問題点や、重点的に取り組むべき課題について、主に法務・税務の観点から解説します。相続税率の高い日本においては税務対策のみに目が行きがちですが、ファミリービジネスの企業価値向上や創業家内の紛争予防等についてどのような対応をとるべきかについて、近時注目を集めるようになってきた「ファミリーガバナンス」などを例に挙げてお話します。
後半においては、アドバイザーの皆様向けに、一専門家としてどのような点に気を付けているか、または苦心しているかについて、ざっくばらんにお話したいと思います。その際、他の専門家と連携するときに留意している点や、紛争含みの事案において留意している点などについても触れる予定です。

講師プロフィール

大石 篤史 氏 森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士・税理士

1996年東京大学法学部卒業。
1998年弁護士登録。
2003年ニューヨーク大学ロースクール(LL.M.)卒業。Weil Gotshal &Manges法律事務所(ニューヨーク)にて執務。
2007年経済産業省「MBOに関するタスクフォース」メンバー、2016年早稲田大学「国際ファミリービジネス総合研究所」招聘研究員。
ウェルスマネジメント、M&A/組織再編及び税務を主要取扱業務とする。
富裕層関連では、様々なソリューション・サービスを提供しているほか、一族内紛争・税務調査対応等の業務を行っている。

セミナーレポート

寄稿 FBAAフェロー・執行役員 (AFBSA) 上田 雅美

  1. セミナー概要

本セミナーでは、ファミリービジネスにおける課題と、それに対処するためのファミリーガバナンスの重要性について学びました。大石篤史先生による講義を中心に、法務的な側面からファミリービジネスの運営に関する様々な問題と、その解決策が示されました。

  1. ファミリービジネスの課題とソリューション

特に遺留分の問題や紛争予防のためのルール作り、ファミリーガバナンスの構築について丁寧な説明がありました。具体的には、遺留分の放棄や生命保険の活用、信託を用いたファミリーガバナンスの対策が紹介され、法務的なリスク管理がいかに重要かが強調されました。また、名義株の問題や、離婚時の財産分与、少数株主による訴訟リスクといった現実的な問題にも触れ、事前のプランニングや公正証書の活用が推奨されました 。

  1. ファミリーガバナンスと相続税対策

相続税対策としては、日本の相続税対策として、評価額を下げる方法や財産を対象から外す方法が取られることがあるが、最近の裁判例ではこれらが否認されるケースが増えていること。
税務対策だけでは抜け落ちしやすい事象、ネガティブな事象を避けるため、ファミリーガバナンスのルールを作っておくと良いとあり、参考になりました。

  1. プロフェッショナルの役割

事業承継において、プロフェッショナル(弁護士や税理士など)の役割も重要です。特に、ファミリー全体の利益を守りつつ、特定の個人のニーズにも対応する必要があります。このような取り組みには家族全員が参加することが必ずしも必要ではなく、必要なメンバーのみが積極的に関わることが現実的であり、導入後の柔軟性を持った仕組みが重要であることが述べられました。

  1. 学びと今後の経営に活かせるポイント

本セミナーで学んだことの中で、特に役立てられると感じたのは、事前のリスク管理とファミリーガバナンスの重要性です。私の立場では、クライアント会社の長期的な安定と発展のために、早期からファミリーガバナンスを導入し、異流分の問題や財産分与といった法務的リスクを予防することが不可欠です。また、少数株主による訴訟リスクを避けるためにも、株主構造の整理や信託の活用を検討することが必要だと感じました。プロフェッショナルとの連携を深め、柔軟かつ実務的な対応を取ることも、今後の経営戦略に取り入れたい要素です。

このようにガバナンスを構築することが、少しでも関わる人たちそれぞれの尊重とも感じましたし、従業員や銀行などにとっても信頼につながるのではないかと感じました。

  1. 結論

本セミナーを通じて、ファミリービジネスの課題に対する法務的なソリューションやガバナンスの重要性を深く理解しました。ファミリービジネスアドバイザーとして、ファミリーガバナンスを早期に導入し、一族内の合意形成を図りながら、リスク回避に向けた準備を進めることが、会社の安定した成長に繋がり、スリーサークルに関わる人たちをしっかり守ってゆくことにつながることを学びました。

大石先生のように十分な経験をお持ちのプロフェッショナルとチームで、ファミリービジネスに関わってゆきたいと思います。
FBAAフェロー・執行役員 (AFBSA) 上田 雅美

参加者の声

ファミリーガバナンスの重要性について、学びがありました。分かりやすい内容で、ファミリービジネスに関与する弁護士として、とても参考になりました。ファミリーガバナンスの導入について、クライアントに対する提案の仕方が悩ましいところではありますが、他の専門家を交えながら、工夫していきたいと思います。(FBAAフェロー 大杉 真)
フェミリーガバナンスとタックスプランニングの両立
大変参考になりました。ありがとうございました。信託の点について詳細もお聞きしたいと思いました。(FBAA会員 有賀 雄一)
夫婦間の契約について、民法改正のことを知り興味を持ちました。ありがとうございます。(FBAAフェロー 村田 弘子)
法務・税務の両面から必要なポイントをバランスよく学べました!当方不勉強で、少しわかりにくい箇所ありましたが後でしっかり復習しておきます。(FBAA会員 長松 睦裕)
どのような点が問題になっていくのか、その対策方法を事例として知ることが出来たことが大変有意義でした。
精読した書籍の著者の後援会、励みになりました。ふぁみどくを思い出しながら必死についていきました(FBAAフェロー 桑元 紳)
信託の有効性がよく分かりました。ありがとうございました。
現場感のある生々しいケースもお聞きできてよかったです。
日本でまだ事例の少ないファミリーガバナンスの法的な備えについて、論点をお示しいただき、勉強になりました。ファミリーの合意形成は一筋縄ではいかず、また、世代を超えた約束ごとがファミリーにとって本当に良いのかどうか、そのファミリーの幸福につながるのかどうか私も悩みます。私はオーナー家の学習を支援する立場ですので、法的な備えとセットで、より良い形を作りたいと思いました。貴重なお話に感謝いたします。(FBAAフェロー 丸山 祥子)
書籍ではスッと通り過ぎてしまったことの中に、大切なポイントが多くありました。
相続税の申告でも、「勘定より勘定が大事」と言われますが、生前から家族の手入れをしておくべきと痛感いたしました。
ファミリービジネスにおいて生じうる問題とその対処法をご説明頂き、自分自身として認識していないことも多く、非常に参考になりました。特に、公正証書化が非常に有効であることは新たな学びでした。
大石先生には以前弊社メンバーで勉強会を開催いただき、大変お世話になりました。本日は事例も含めてファミリーガバナンスについてご教授いただき、改めて頭の整理をすることができ大変勉強になりました。
以前の勉強会でも仰っておられましたが、「顧客それぞれのニーズに合わせてカスタマイズ」というのは、実際に業務を行う上で切実に感じております。顧客それぞれに思いや考えがあり、お金や効率性だけの話で進められるものではないと日々実感しております。
なかなか正解のありそうでない世界のため試行錯誤ですが、今後もこういったセミナーを通して研鑽していけたらと思います。
本日はありがとうございました。
えてして捉えにくかったファミリーガバナンスの検討ですが、法務・税務上のリスクを回避し、事業を承継していくために、規模の大小、レベルを問わず必須である事を十分理解いたしました。まずはFBAがクライアントに対し法務視点でどのようなリスクがあるか、可視化することがスタートかと感じました。大変重要な気づきを頂きました。誠にありがとうございました。(FBAAフェロー 望月 俊輔)
正しくニーズを把握することと、対策を打たないとどの様になるか、を伝えることが最も重要と感じました。(FBAAフェロー 阿部 敦史)
できればあまり考えたくない様な事例もあり、大変身につまされました。

Top