FBAA第64回定例セミナー 開催レポート
「ぬくもりある会社づくりを目指して 」
FBAA第64回定例セミナー 開催レポート
「ぬくもりある会社づくりを目指して」
主な講演内容
入社して数年間、お客様第一をモットーにCS中心の運営。
2010年、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者・坂本光司先生の講演会で、経営で一番大切なのは働く人とその家族の幸せというES中心の経営に衝撃を受ける。
それを機に半年間かけ経営理念、ミッション、創業の精神をつくり、「理念経営」「大家族主義経営」「道経一体経営」を目指し出す。
その間の様々な出来事や取り組みの実践事例を発表させていただきます。
講師プロフィール
長坂 善人 様 株式会社長坂養蜂場 代表取締役
大学進学を機に上京・卒業後、大手はちみつメーカーで修行したのち2005年に長坂養蜂場に入社。
2013年に長坂養蜂場三代目社長に就任。
2010年に経営理念「ぬくもりある会社をつくりましょう」、創業の精神「感謝 報恩 三方よし」、ミッション「BEE HAPPY !!」を定め、人を大切にする経営をスタッフぶんぶんファミリーと共に挑戦中。
2020年「日本でいちばん大切にしたい会社大賞 審査委員会特別賞」を受賞。
セミナーレポート
寄稿 FBAAフェロー・執行役員 (AFBSA) 上田 雅美
長坂養蜂場は、静岡県浜松市三日日町に位置する。
創業は1935年。
長坂社長自ら朝四時から養蜂作業を行い、はちみつのある暮らし(はちみつの生産・販売・加工食品の製造と販売)を提供している。
店舗とオンラインで製品の販売を行っているが、店舗の駐車場がいっぱいになり、時には近隣に車の渋滞が起きるほどの人気店。
ショップでは「ぶんぶんファミリー」と呼ばれる従業員がイキイキと働いている。地域の大人気店の一つである。
- なぜ、家業を引き継いだのか?
今回ご登壇いただいた長坂善人氏は3代目にあたる。
家業を継がなくても良いと言われて育ったが、ある時あまりの忙しさに母親が倒れてしまう。その姿を見て、家業を継ぐことを決める。しかし、自分自身養蜂の経験が少なかったため別の養蜂場で修行を積む。その間に弟が先に入社。
もとより家族で助け合うことが自然な環境で本格的に家業に参画するようになる。
- 出会いと気づき
兄と弟が本格的に経営に参加するようになり、二人の力で新商品を開発し、販売へと力を入れてゆく。
そのころの会社は10人ほどの小さな会社。当たり前のように顧客第一主義を信じ、仕事に邁進する。スタッフにあれこれ言いつける日々が続く。
母親に呼ばれ「正義の刃は人を傷つけるから気をつけなさい」と注意されることもあったほどだ。そして、スタッフが疲弊。奮闘する中、転機が訪れる。坂本光司先生の人を大切にする経営学会のシンポジウムに参加。
そこでは自分のやってきたことと一線を画する、従業員と家族を大切にする企業が続々と紹介されていた。
あまりのショックに、いまだに帰り道の光景が忘れられないと長坂氏は話す。
「誰のために、何のために、経営をするのか?」を考え始めることになる。
- 本格的に経営理念を考え、取り入れる
当時会社に社是なるものはあったが、改めて父・母・弟に理念作り直したいと提案。
家族で経営理念づくりに取り組むも、意見もバラバラ。ただ、だんだんとやってゆく中で4人のベクトルが合って経営理念が出来上がる。そして「ぬくもりある会社をつくりましょう〜強く 優しく 逞しく〜」をベースにした経営が誕生する。
講演では「今思えば、役員がバラバラだったけど理念ができることで未来が見えた安心感がみんなを包んでみんなを変えたように感じた。」と当時を振り返る。
- 理念をブレずに貫く勇気
理念ができあがりこれからというときに、実は長坂氏は不安を感じていた。
「理念を本当にブレずに貫くことができるのだろうか」
そんな中、仲間に誘われ「本気塾」に参加。そのセミナーで自分の本気を確かめたかった。
学び続ける中で、突然弟が新しいことをやってみたいと資料を作って持ってくる。
せっかく理念を作って一緒にやってゆこうと決めた矢先だというのに・・・。
いつもお互いに言いたいことを言い合ってきたつもりだと思っていたが、ふと弟がいつも自分を立てていてくれたのではないかということに気づく。
たくさんの学びがあったが、本気塾の最後は自分自身が自分の志をプレゼンする。
長坂氏は弟をそのセミナーの最後のプレゼンに招き、自分の思いを思い切り伝えた。
そこからまた新たに自分の人生が変わった。今まで気づかなかったことに気づけるようになる。
自分の受け止め方が変わると、どんどんとこれまでの壁が自分の成長の糧であったように感じたそうだ。
- ぬくもりある会社づくりと未来
現在の長坂養蜂場は、幸せを軸に経営をしている。
養蜂場を営む上で大切な蜂への感謝。先代への感謝。「上から流れているものにしっかり感謝できる人になろう」と従業員にも家族を大事にするように教育をしている。
現在でははちみつの製造・販売ではなく、将来に向けて「はちみつのある暮らし」の実現に向けて、大きな絵を描いている。
経営理念には、初代がどのようなことを大事にしてきたのか、生き方をしてきたのかを言葉にしてきた側面があるとのこと。
ファミリービジネスにおいて家庭内の教育や価値観は一足飛びに作ることのできない強い結束にながってゆく。家族にとって当たり前の価値観だったからこそ自然と力を合わせることができ、経営がブレないからこそぶんぶんファミリーである従業員が安心して存分に力を発揮できる企業へと発展してきたことが伝わってくる。