後継者による第二創業 ~守りと攻めを両立する~

第二創業とは、後継者が先代から事業を引き継いだ後に業態転換や新事業を起すことにより、更なる事業拡大を目指すことを言います。

多くの企業が高度経済成長期に大きくビジネスを成長させた経験がありますが、昨今の経済環境の大きな変化や様々なテクノロジーの発展によって競争のルールが変わり、ビジネスの成長が鈍化してしまうケースが多々あると思います。

先代の創業者は過去の成功体験に縛られ、業態を変化させたり、新事業を起こすなどといった行動を起こせなくなってしまうことが多く、バトンタッチした後継者がその役割を担う機会が増えてきています。

第二創業を行う後継者のモチベーション

「第二創業」を志す後継者には下記のような2種類のモチベーションが存在すると考えています。

危機感がモチベーションとなっているケース

大きな環境の変化で既存事業が行き詰まっており、将来に向けて何か新しい収益源を確保しなくてはと考える危機感がモチベーションとなり、業態の変化や新事業を起そうと考えるケースです。

自分らしい事業を行いたいと考えるケース

自身の得意分野を活かした事業展開や、興味のある分野へ業態変更を行いたい、といった後継者の願望が主体のケースです。

ケースによって新規事業の進め方は変えるべきだと思います。前者は現場との危機感のギャップが足かせになることがありますし、後者は社員に認められていない状態だと反発を買いかねません。

第二創業を円滑に進めるためには、第二創業のメリットや難しさを事前に認識しておくことが重要だと思われます。

起業と比べた第二創業のメリット

第二創業の場合、多くが数十年以上の業歴があるので、今まで築き上げてきた経営基盤を活用しながら新規事業を行うことができるのでリスクが低い、ということが起業との大きな違いです。

具体的には下記のようなメリットがあると考えられます。

・新規事業を行うための人手が既に社内に揃っている

・既存事業の顧客へ展開できる事業であれば、その顧客基盤を十分に活かすことができる

・新規事業を行う上で必要となる資金調達(金融機関からの融資など)が行いやすい

第二創業の難しさ

第二創業の難しさは「組織の問題」に集約されるのではないでしょうか。新規事業を推進するために下記のような具体的な問題が表面化することが多いです。

・後継者の言うことを既存の社員が聞かない

・先代の時代に出来てしまった派閥が存在する

・古い社員の危機感を芽生えさせることが難しい

・社長になったばかりの後継者が好き勝手な事業を始めることが気に入らない

第二創業成功のポイントは、この組織の問題をいかにクリアするかに懸かってくると言っても過言ではないでしょう。

第二創業の成功事例

上記のような難しさを乗り越え、第二創業を成功させた企業の事例をご紹介したいと思います。

株式会社柳屋(後継者のモチベーションに合わせた事業転換)

株式会社柳屋はJR神田駅前のワインショップ(ヤナギヤ)で、1936年に墨田区の両国駅前に酒類小売として営業を始めました。

1957年に現在の神田に店舗を移し、1994年にワイン専門店に転換されました。現在は1Fにてヨーロッパ、国産のワインを、2Fでは南北アメリカ大陸のワインを取り扱っています。

人口減少、少子高齢化、若者のアルコール離れによって国内のアルコール市場が減少し続け中小酒屋も減少の一途と辿ります。

そんな逆風の環境の中ヤナギヤは時代に応じて酒、ビールから焼酎、そしてワインへと取り扱い品目を柔軟に変えてきました。

ヤナギヤが意識したことは「ベンチャー的事業継承」です。2代目から3代目に継承される過程で単に既存ビジネスを継承するだけではなく、事業を「進化させながら継承」されました。

特にチャネル戦略の拡張に関して2代目では配達、実店舗、通販を主な販路としてきましたが、3代目に移行する中でネット、ソーシャルと販路を拡大することで売上げを伸ばしてきました。

3代目の崇洋氏が中心となって2000年にネット販売ベンチャーであるスプートニクと組んでSUPER WINE SHOPをオープン。

2004年3月までの約4年間、独立店舗としてオンラインショップのノウハウを蓄積、毎年約3000オーダー、15000本のワインを販売しました。

そして2004年4月に楽天市場にEsprit du Vin YANAGIYAをオープンし楽天の中の優良店舗として数々の賞を受賞するようになりました。

2代目と3代目がそれぞれの得意分野を活かしながら、欠点を補完し合い事業を拡大させたのです。

2015年からは地域活性の取組みも行っています。ヤナギヤは周囲の飲食店を巻き込んで「神田ワイン祭り」を主催し、ネットやソーシャルで告知を行い一日で1,500人もの参加者を集め、町を賑わせました。

Top