ファミリービジネスにおける経営理念の浸透

FBAAでの学び

コンサルティングを行うに際して、クライアント企業様がファミリービジネスであるか否かをことさら意識することは今までは少なかったのではないかと感じています。

ファミリービジネスアドバイザーとしての立ち位置で、ファミリービジネスに関わるようになって、クライアント様への提案領域が増えることになりました。

それは、「所有」と「経営」の問題に関与するという視点と併せて、「家族」という視点が増えることであると認識しています。

ファミリービジネスは、「家族」の視点が特徴的です。3つの視点が相互に絡み合うということは、非ファミリービジネスでは起こりえない問題が、ファミリービジネスで発生するということであり、それがコンサルティングのテーマとなります。

問題という表現ではなく、解決策の領域が広がるということです。領域が大きくなるということは、問題の解決に対する専門性の高さも要求されますから、各分野の専門家の協力が必要不可欠となりますし、そのコーディネート機能の存在がとても重要になると考えています。

状況が同じ企業は一つもない

クライアント企業様との関わりの中で、クライアント企業様がファミリービジネスであることを意識して関わることで、顕在化したコンサルティングニーズをいくつか挙げてみます。

○事業拡大に伴い、従業員への理念浸透を急ぐ非ファミリー役員の存在

○事業展開が急速に進み、採用と育成が追い付かず理念浸透に危機感を募らせる非ファミリー幹部

○承継計画通りに事業を譲らない社長と、困惑している後継予定者

○事業拡大には成功したが、後継者育成が後手となり承継の目途がたたない高齢の社長

○経営者としての苦労をファミリーには味あわせたくないと悩む経営者

等々

後継者育成、理念の浸透行動促進、事業承継計画作成、また、エグゼクティブコーチング等の必要性が高いテーマが多いようです。

理念が重視されるのはなぜか

理念の浸透について触れておきます。言うまでもなく非ファミリービジネスにおいてもファミリービジネスにおいても企業理念やビジョン、行動規範などは、長年培ってきた創業者の思いが詰まったものであり、ビジネスの継続性という点でも重要な位置にあります。

経営理念が重視されるのは、経営者の経営判断は元より、従業員の日常の目標達成行動に影響を与えるからです。

日々のビジネス活動において、判断を迫られる各場面でその善し悪しを決定する暗黙の基準が、理念であると考えます。

「道に迷ったら顧客に戻れ」「判断に迷ったら理念に戻れ」は、経営者、経営幹部をはじめとしてビジネスパーソンが常に心がけるべきキーフレーズとなります。

経営理念が組織に徹底しているということは、従業員は、上位者からの指示がなくても経営理念を判断基準として自ら考え自ら行動ができる状態になります。

経営者の判断基準が、経営理念を拠り所としているのと同じように、従業員全員に浸透していることが組織体質が強化された状態ではないかと考えます。

組織のアウトプットを良質なものにしていくような組織体質にしていくためには、アウトプットの前提となる確固たる経営理念が必要不可欠であり、経営者・管理者自らが浸透行動を行っている状態をつくることが重要となります。

理念の浸透・行動をサポートする事例

経営理念の浸透、行動指針に基づいた行動、つまり理念の浸透行動を全社で実行することを狙った取り組みメニューの一つをご紹介します。

これは、非ファミリー管理者とファミリー管理者が同一のテーブルで行うミーティングです。考え方や意識の交流、言葉の共有を通して当事者意識を醸成することが重要であり、具体的な行動をコミットメントすることを狙いとしています。

現場での行動とそれを踏まえたミーティングなどを繰り返し行います。

【概念】理念の必要性を考える

・理念の意味、背景

・理念を持つことの必要性

【言語化】理念「ありたい姿」を語る

・理念(目的)が浸透され行動指針(手段)が実現できている状態

・理念を自分ごととして自分の言葉で語れる状態

【浸透状況】浸透の現状を考える

・ギャップ(=問題)の明確化

・自分、職場の課題

【浸透アイディア】理念を浸透させるための行動を具体化する

・行動リストづくり

・理念浸透・方針実現のための意識統一

【浸透行動】

最後に

今後は、理念の策定、浸透、行動へのサポートだけにとどまらず、ファミリービジネスの永続性へのお手伝い進めていきたいと考えております。

非ファミリーの従業員、幹部の育成も含めて、オーナー様へのコーチング、ファミリーへのサポートなど、FBAAの専門家の方々とのコラボレーションを通して、ファミリービジネスの発展に寄与していきたいと考えています。

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