歴史あふれる京都に生まれ、ファミリービジネスに囲まれて感じること

FBAA第5期生の木村隆紀と申します。京都の東山区清水に生まれ、46年間、ずっとこの場所で生活しております。

生まれて初めて、ファミリービジネスの重みにふれたのは、幼少期3歳の頃でした。自宅近くの保育園に入園した際、先生や保護者の方が、私の同級生のことを「15代目ちゃん」と敬称しているのを見て、「なんのことかなぁ」 と感じたこと、鮮明に覚えています。

のちに、彼が、地元で有名な創業350年の老舗企業の15代目であることを知ります。

その彼とは、中学校時代まで同じ学び舎に通い、旅行やスポーツ観戦など、家族ぐるみで深い交流をもちました。

彼の自宅に行くことが沢山あり、お父様やお爺様が、彼のことを幼少期から、厳しく温かく、厳格かつ大切に育てられたことを、すぐ傍で見ることができました。

生まれた瞬間から、家業を継承することを義務づけられた跡取りとしての振る舞い、考え方、覚悟など、日々の生活の中で、周りの人たちが時間をかけて、後継者を育成してゆく熱意が凄く感じられ、子供ながらに歴史と伝統の重厚感に緊張いたしました。

彼とは、現在も、地元清水の御世話役や本業のビジネスでも、お取引があり、良好な関係が継続しております。

京都という土地柄、創業100年以上の老舗企業や寺社仏閣の御用達企業、皇室ゆかりの由緒ある伝統産業企業が数多く存在いたします。

そのほとんどの企業がファミリービジネスであり、中堅・中小企業の事業規模であります。

幼少の頃より、ファミリービジネスを見ていて、様々な事例や複雑な問題が沢山あり、全てが全て順風満帆でないことを肌で感じております。

また、同族の問題以外にも、外部環境の変化(戦争、台風、地震、世界問題 )などにより、永続することが困難になることもあり、様々な問題に対して柔軟かつ迅速な対応力も、ファミリービジネスには必要だと思います。

京都で生活していて、老舗企業の方々をお話すると、ほとんどの方が、口をそろえて、身分相応の商売に徹するということを強調されます。

「屏風と商いは広げすぎると倒れる」とか、「でんぼ(おでき)と料理屋は大きゅうなったらつぶれる」など、それぞれのファミリービジネスにおいて、家訓や社是など何百年もの間、語り継がれてきた御先祖様からの言い伝えを大切に守っておられます。

実際、京都では、売上や利益の大きさよりも、創業から何年間、商売を継続したかとか、何代継承された同族経営なのかの方が重要視されます。

私自身、祖父が八百屋を創業し、父親が受け継ぐ、個人商店の家庭に生まれました。

幼少の頃、「あんたは跡取りやから・・・」と祖母から何度も言い聞かされ、子供ながらに、常にプレッシャーを感じていたことを昨日のことのように覚えております。

そんな家族の強い想いに反して、高校卒業後、飲食店に就職し、6年後、そのお店を自分で経営することになった為、父親が経営する八百屋を継承することはありませんでした。

父親が、がんを患い、余命わずかの時に、「おまえは家業を継がなくていい」と言って、経営する八百屋を自らの決断で廃業いたしました。

いまだに、あの時、父親は、どのような想いで、自分のお店を閉めたのだろうと考えてしまいます。

現在、私には、23歳と21歳も息子がおります。

小さな規模ですが、従業員数200名(正社員、アルバイト含む)、京都市内に9店舗の飲食店を、私は経営させていただいております。

二人の息子は、私が、八百屋という家業を継がなかった事実を理解しております。今、二人の息子は、これからの人生、どのように考えているのか?

私の父親が、私に言ったように、「自分の人生は自分の好きなようにすれば良い」という決断が本当に正しいものなのか?

私が父親の家業を継がず、自分の希望する道を選んだように、二人の息子にも、自由な選択肢を与えるべきなのか?毎日が自問自答の連続でございます。

揺れ動く心の葛藤の中、偶然、出会えたのが、FBAAでした。FBAAの第5期生として、2017年の一年間は、学び多き、実り溢れる有意義なものでした。

これからも、FBAAフェローとして、ファミリービジネスについて、深く学び続けたいと考えております。

最高の御縁、FBAAの皆様との出会いに、心より感謝、申し上げます。

Top