技術経営(MOT)と国際連携 〜MOT視点からのグローバルビジネスアライアンス〜

・講師:綾尾愼治氏 MITエンタープライズ・フォーラム・アライアンスコミッティチェア

・日時:2013年5月25日(土)13:30~15:30

・場所:銀座フェニックスプラザ(東京都中央区銀座)

以下は、第3回FBAA定期セミナーとして、当日の講演内容(2015年10月26日一部補筆)を要約したものです。

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昨今ニュースで国際的なあるいは歴史のある企業において軒並みコンプライアンスがきちんとしていない話題が続いています。

企業が世界的規模であれ、国内だけであっても許されないことです。そしてこれからは長年の社風にとらわれず、勇気をもって新たな考え方を試みていただきたい。

これからベンチャービジネスを立ち上げる方も、そしてまた今までの事業を伸ばそうとする方も本来の意味でのガバナンスに目を向けていただきたい。

これらを大事な基盤の一部として事業戦略を考え、実践し実績を上げている企業や、今日のグローバル規模のビジネスアライアンスについてもお話ししたいと思います。

最初に本日のお話の概要を説明いたします。

まず技術経営(MOTというのは、本来MIT(マサチューセッツ工科大学)のビジネススクールの一つのコースMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)で、大企業のいわゆる技術系トップであるCTO(Chief Technical Officer)を養成することを主目的に70年代から実施されてきている教育プロセスを意味します。

日本も10年前に導入しましたが、今はどちらかといいますと「技術経営」は、会社の企業内でイノベーションを起こしてそれを核にまた新たな事業展開をしていく、そして、日本を元気にする、国から見るとそういった捉え方で日常的に使っています。

しかしそのMOTの主対象である日本のものづくりというのを見直さなければいけない、そこで私自身がMIT-EFJを立ち上げに参加して足掛け14年になります。その間1000例以上の中小企業の事例を見てきておりますので、その観察経験をもとにおはなしします。

次にイノベーションと声高に言われて何年もたちます。

今回はオランダのDSM社を例にとりあげたいと思います。2年前に戦略担当の役員と会う機会があり、ちょうどそのとき作成した事業戦略というのを出してもらっています。滅多に企業から出てこないものですが、すでに2年ぐらい経ちましたし、実際実績を上げてきていますので、作られた戦略的なものがどういう風に戦術として使われているか、その辺を見ていただきたいです。逆に日本の中小企業の人達がどのような企業とどのように連携すればいいかという観点から、成長戦略の仕組みを御理解いただきたくDSM社のケースをご紹介したいと思います。

そして、グローバリゼーションとは、アメリカ、アジア、ヨーロッパという形で連携を広げてゆくことと思います、私の終生の仕事であります産学連携をキーワードとした日米のアライアンスと、それから日台、つまり台湾との関係、を中心にお話して、それをヒントに今後世界に出て行く時の切り口にしていただければと期待し、最後に経営者としての心構えをお話ししたいと思います。

私の経歴ですが、中性子物理の研究を主に原子力研究所やMITで過ごした後、イギリスの温度制御機器のベンチャーを経て、グレイ・リサーチというスーパーコンピューターの会社に籍を置きました。

IT といえばITの発達に比例して、日本ではITを経営に使うところがまだ遅れています。中小企業の皆さん、絶対に実行していただきたいことがあります。前月の実績は翌月の2、3日以内にはきちんとデータを出して、それに基づいてその月のアクションを着実に取っていく、それを繰り返しやらない限り世界のスピードについてゆけないと申し上げたい。

その後、私が携わったシンコーという会社が、まさにファミリービジネスの会社で通信機器・システムを作っていました。既に30年以上前の話ですが、マニュアルに従っていないと駄目だという下請けから脱却を目指す会社がいくつか現れてきた時期でした。

そういう面で中小企業の人達に、もう1回ものづくりの基本をレビューしてもらうと、マニュアル通りではだめだということに気付いた人たちが新たな一歩に飛びだせます。それをまさにアジアをはじめとする人達が見ていますので、必ず興味を示してくれます。まずはこのことが最初に手掛けることではないかと思います。

このシンコー社で一つ学んだことがあります。ファミリービジネスですから一本筋が通っていて、アクションはすごく早いということす。朝令暮改というのは普通駄目な表現の典型ですが、中小企業では、戦略的には駄目ですが戦術的には朝令暮改は日常茶飯事必要、ということを私は学びました。

とにかく数字に厳しくて、必ず10%の経常利益を出していました。そして、利益の半分は翌期に投資する、というサイクルを回すようにしました。その規模を大きくしたのがソレクトロン社で、私が入ったころ2000億円ぐらいの年商でそれを毎年倍々ゲームで大きくしていったのですが、そこでの基本的なことは決断力とか判断力ですが、それをどうやって経営者である自分のところに集約してくるかということだと思っています。

ソレクトロン社の前に勤めましたAT&T社は本来の通信サービス、通信機器製造に買収等でコンピューター事業やマルチメディア事業を加え4つの大きなグループを持つ企業体になりました。まとまったイメージOne AT&Tを打ち出すには大変な努力を費やしました。

大きく成長しているファミリー企業にもその悩みはきっとあるはずです。ソレクトロン社のあとサラリーマン生活に終止符を打って、起業教育と起業家支援をミッションとする日本MITエンタープライズフォーラム(MIT-EFJ)を同窓生数人と立ち上げました。MIT EFJは2014年に日本MIT ベンチャーフォーラム(MIT VFJ)と改称しました。

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私が起業家という表現の時には当然いわゆるベンチャーを含みますが、中小企業の第二創業、これにもっと重点があると考えます、数としてもこちらの方が断トツに多いですね。

中小企業における第二創業の人達がどんなところが問題だったか、ということで、やはり素晴らしい資質を持った人たちが多いですが、シーズから新しい事業を事業化する時のプロセスの説明が曖昧で、相当わかりにくい点です。

ダントツの差別化は、他社との比較とか、商品としての価値をどこにあなたは見出しているのですか、差別化する基本的なところが技術なら技術、あるいは企画力かもわかりません。

いろいろあると思うのですが、差別したところが本当にお客さんに利益をあたえているかどうかそこまで検討するということで3番目のバリュープロポジションという言葉は頻繁に使います。

顧客価値をあなたはどういう風に生んで、どういう風に提供しているのですかと、差別化を説明する際のキーワードとして是非お使いいただきたいです。

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もう一つは先程最初のほうに触れましたように、世界中の人達とお話しする、仕事をするに当って共通のプラットフォームということで、バリューチェインという概念が非常に重要になってきます。

バリューチェインというのは元々ハーバードの先生が30年以上前に作り出した概念なのです。日本がものづくりでどんどん成長してきて、ジャパン・アズ・ナンバーワンの頃です。その頃にアメリカは何くそ負けるなと日本をものすごく研究した時代です。1970年代後半から80年頃ですね。それでこういったバリューチェインという考え方が出てきたわけです。

社外から材料や部品を仕入れてきて、社内で製品を製造・製作し、そしてマーケティングとセールス活動のあと倉庫を含む物流を通じて製品を市場に出し、その売った製品に対してメンテ・サービスをする、という必須の流れが、一次的な流れになります。

私は最近の流れとしてマーケングという考え方は前に持ってきた方がいいだろうと、いうことでプランとかデザインするのを材料、部品購入前に持ってきて、そういった計画したものに対して物品を仕入れてきて製造してそしてマーケットに出して売って、そしてサービスという流れになります。それが新たな基本的なバリューチェインです。

それをサポートする形として購買部門があったり、技術開発部門があったりあるいは人事部門があったり。今は非常に重要ですが企業内のITを中心とするインフラを備える、といった形で支援体制をもつ。このような大きなシステムがバリューチェインそのものです。

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次に、やはり「事業は人なり」。事業が発展しているとすれば、それを推進する人たちに対して第三者的に判断するとか、その人の立場になって考えてあげるとかそういった面で大切な人が存在します。

アドバイザーというより、私は別の表現としてメンターを使わせていただきまして、メンターとしての役割が大いにある、と思っています。

メンターという言葉はもともとギリシャ神話のオデュッセウスが戦場に赴く際自宅に置いてゆくわが子をメントルという人に託したことが起源です。どういう風に自信をもたせるか。受ける側(メンティ)としては自分の価値を自覚しているわけですから、その自分の価値を向上させたい気持ちがあるので、その為にはメンターがどんな役割をするかというと、ここではやはり目標になりメンターのようになりたいと思わせることでしょう。

また、メンターというのは、ああしろ、こうしろということは絶対に言わない。メンティに気づかせるというところが非常に重要なのです。本当に気づかないと彼ら自身がやれないわけですから、自分で出来るように仕向けて気づかせてちょっとだけ背中を押してあげる、こういうのが役割と思っています。

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