データから考える同族承継のコツ

オーナー経営者の相続と事業承継のお手伝いで15年目となりましたが、年々、後継者未定の方が増えているように感じます。

帝国データバンクによる後継者問題に関する調査(2014年7月)によると、下記のとおり、中小零細企業が事業承継に苦労する傾向が読み取れます。

  1. 国内企業の3分の2にあたる65.4%が後継者不在。
  2. 社長の年齢が「60歳代」の企業では53.9%が後継者不在。同じく「70歳代」は42.6%、「80歳以上」でも3社に1社にあたる34.2%が不在。
  3. 後継者のいる企業における後継者の属性は、「子供」が構成比38.4%で最多。「配偶者」「親族」と合わせ同族が約7割に達する
  4. 企業のキャッシュを生む力(売上高事業価値比率)は、不在企業が後継者あり企業の半分以下。社長の高齢化に伴い事業価値が低下。
  5. 売上規模別では、1000億以上が後継者不在率25.7%、100~1000億未満が40.5%、10~100億円未満が55.5%、1~10億円未満が66.5%、1億円未満が76.3%、となり、規模が小さくなるほど後継者不在の傾向は高まる。

このようなデータと、これまでの実務経験から、同族承継をうまく進めてゆくためのコツを考えてみました。

 1.企業価値向上に努める

事業承継を行うためには、まず企業価値を高め、後継者に継ぎたいと思われる会社にしてゆくことが最大の条件になると考えられます。

後継者の意思があってこその事業承継ですので、業績が良いことはもちろんのこと、事業の将来性や公益性なども大切な要素だと思います。

後継者候補である子息を修行のつもりで大手企業に就職させたものの、大企業の仕事のスケールに魅力を感じ、親元に戻ってこないという事例もありましたので、早いうちから自社の仕事の魅力と将来性を伝えてゆくことが大切だと感じます。

2.少しでも早く対策に着手する

良い会社になれば子供は継ぎたいと思い、自覚して努力をするものの、一方で自社株評価は年々あがり、税金面の負担が生じます。

少しでも早く対策に着手することで株式の移転コストは軽減され、会社のバランスシートを毀損する懸念がなくなります。

相続税の納税資金対策として有効な生命保険については、年齢が若いほど有利な条件で加入できる可能性が高いので、少しでも早く加入しておくことをお勧めしています。

いわゆる掛け捨ての定期保険は敬遠されがちですが、若いうちに保障額を確保しておけば、契約途中で健康状態に関わらず終身保険への切り替えができる保険会社もあるようです。

企業の成長段階に応じた生命保険の見直しも重要なポイントになります。

3.個人財産のバランス

お子様が複数いらっしゃる場合、事業承継者とそれ以外のお子様への財産承継のバランスが大切です。

とかく、自社株の承継だけに課題がフォーカスされがちですが、遺産分割のトラブルが会社の経営に悪影響を及ぼした事例も多数見てきています。

後継者以外のお子様に何を残してあげるか、バランスを考えておくことも、後継者の方に安心して承継してもらうための重要な要素です。

 

事業承継は当事者だけで判断することが難しいテーマばかりであり、中立的な立場のアドバイザーの重要性がますます高まっていると感じます。

今後もコミュニケーション能力を高め、専門家との連携を強化し、クライアントを最良の結果に導けるよう努めてゆきたいと思います。

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